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2013年8月の代表メッセージ その1

■□実効性が薄い「いじめ防止対策推進法」 □■
 ◆遅きに失した「いじめ防止対策推進法」
 いじめ対策について、6月21日、「いじめ防止対策推進法」が参院を通過し、6月28日に公布されました。
 私たち「いじめから子供を守ろうネットワーク」は、多くの賛同者の皆様と共に、首長や議会、教育委員会に、要望書あるいは陳情書を提出するなどして、7年近くも「いじめ防止法」の制定を訴えかけて参りました。
 法律制定には、私達と共に、「いじめ防止法」の必要性を訴えてきた明星大学教授の高橋史郎氏や教育評論家の森口朗氏、そして衆議院議員義家弘介氏等の発言も大きく影響したことも確かです。
 拙著『いじめは犯罪!絶対にゆるさない!いじめに悩むこどもたち、お母さんたちへ』(青林堂)も議論の場に参考資料として上がったとお伺いしました。
 「一つの山」を超えたことは確かですが、この7年という時間の中で、どれ程の数の子供たちが「いじめ」によって、その若い命を投げ捨てたのかと考えると、遅きに失したと言わざるを得ません。

 ◆「いじめ防止対策推進法」でいじめは減るか?
 今般成立した「いじめ防止対策推進法」で、本当にいじめは減るのでしょうか?
 7年間に渡って「いじめ防止法」制定を訴え続けた日本で唯一の団体の責任者として、同法の実効性を申し上げる義務があるかと思います。
 結論から申し上げます。
 早くも公布後の7月10日には、いじめによって名古屋市において中学2年の男子生徒が自殺しています。
 「いじめ防止対策推進法」では、いじめは減りません。
 ましてや「いじめ自殺」を止めることなどできません。

 ◆「いじめ防止対策推進法」で評価できる点
 改めて、「いじめ防止対策推進法」を検証したいと思います。いくつか評価できる点もあります。
 まず、同法第23条第4項で、学校は、加害児童生徒を別室で学習させることができると明記した点は高く評価できます。
 「いじめから子供を守ろうネットワーク」が扱ったいじめ相談で、加害者を別室指導した学校の事例は1件のみです。
 「別室指導」が条文化されたことで、学校に「加害者を別室にして欲しい」と申し入れる根拠ができました。
 次に、第16条第1項において、定期的な調査を講ずるものとしている点も評価できます。
 子供たちへのアンケート調査は、いじめの早期発見に大きな効果があります。
 もう一点、第18条で、教員の養成および研修の充実が挙げられている点も評価できます。

 ◆「いじめ防止対策推進法」に足りないもの
 しかし、同法には重大な欠陥があります。「教員への懲戒」について一言も条文化されていないのです。
 この一点が、この「いじめ防止対策推進法」を単なる「いじめは許さない」という宣言にとどまらせています。
 教師のいじめを防止したり、いじめられている子供を守る義務は謳っていますが(第8条)、これは「いじめ防止対策推進法」があってもなくても当然の義務であり、実効性はほとんどありません。
 そのため、同法は「教師は今まで通りで問題ない」というメッセージを発信しているのです。
 この一点が、同法を「ザル法」におとしめているのです。誠に残念です。

 ◆いじめを止める教師の下では、いじめは一日で解決できる!
 子供たちに対しては、第4条で「いじめを行ってはならない」といじめを禁止し、懲戒としての「別室指導」(第23条第4項)や「出席停止」(第26条)をうたっています。
 しかし、子供たちだけに責任を押しつけてはなりません。
 そのように育ててしまった大人の責任、もっと言えば、教師の責任を問わずしては意味がありません。

 日本全国でいじめが蔓延する直接の原因は「教師がいじめを止めない」、ただそれだけです。
 《いじめを止める教師の下では、いじめは一日で解決できる》――これが「できる教師」の常識です。
 信じられない方も多いかと存じますが、事実です。
 そもそも、このようなできる教師のクラスでは、大きな事件にはなりません。
 一日で解決するから当たり前です。

 「いじめを止めない教師」とは、いじめを放置する教師であり、「いじめを見て見ぬふりする教師」とは、いじめに加担する教師であり、いじめを隠蔽する教師や教育委員会のことです。
 こんな教師がはびこるから、いじめは無くならないのです。
 大津のいじめ自殺事件では、担任の教師が被害生徒に「お前が我慢したら丸く収まるんだ」と言ったという生徒の証言もあります。
 さらに、7月10日の名古屋の事件でも、帰りの会で、「自殺する」と言ったことに対して、担任が「死ぬ気もないのに、そんなことを言うもんじゃない」あるいは「そんなのやれる勇気ないのに、やってみろ」と言ったという子供たちの証言が報道されています。

 ◆「いじめ処罰法」の制定を!
 ひどい教師がいじめを広げ、いじめの被害者を自殺に追い込んでいるのは事実です。
 教師がすべきことは、被害者の生徒を黙らせることでは断じてありません。
 加害者を指導することです。

 この「いじめを止めない教師」を「いじめを止める教師」に変えるのが「法的処罰」です。
 いじめを放置したり、いじめに加担したり、さらにいじめ首謀者となった教師や教育委員会は処罰すると明記することで、「いじめを止める教師」が全国に溢れ、いじめは確実に減ると断言致します。
 残念ではありますが、「いじめを止めないとクビになる」と言われなければ動かないのが多くの教師なのです。
 例えば、車のシートベルトも、かつては義務ではありませんでした。
 しかし、反則金をとられるようになってシートベルトの着用率は上がり、それに伴って死亡事故も減りました。
 それと同様、罰則がなくては動かない教師も多いのです。

 ゆえに、今こそ、「いじめ防止法」ではなく、「いじめ処罰法」を制定すべきです。
 「いじめ処罰法」は、言葉としてきつく感じられますが、現実、ここまでやらなければ、いじめ自殺を止めることができないのです。
 いじめは学校で起きています。したがって、実際にいじめを止められるのは「教師だけ」です。
 いじめを止めない教師を「いじめを止める教師」に変える魔法が「いじめ処罰法」なのです。

いじめから子供を守ろう ネットワーク

代表 井澤 一明