2017年10月の代表メッセージ

■□ 守られすぎている教師 □■

10月に入り、帰り道には、にぎやかな秋の虫の声が広がっています。
文化祭や体育祭を行う学校も少なくありません。

9月29日、教師に暴行を働いた16歳の高校生が逮捕されるというニュースが大きく流れました。
28日午後3時ごろ、福岡県の私立高の男子生徒が、授業中にタブレットで授業に関係ない動画を見ていて教師に注意され、ついにはタブレットを取り上げられたことで事件を起こしました。
生徒がタブレットを取り返そうとして、教師の背中をけるなどの暴行を加えたというものですが、この事件が発覚したのは、ネット上の動画がきっかけだったということで反響が大きくなったように感じます。
その場にいた生徒が撮影して動画をネットに上げていたのです。
ちなみに、その授業は、教師が大声で制したために騒ぎは収まったようです。

続いて3日、同じ福岡県で、中学の男子生徒が教員を殴り、顔面打撲の傷害を負わせ、暴行を受けた教員が生徒を傷害容疑の現行犯で「常人逮捕」したというニュースが飛び込んでまいりました。
授業を受けずに外にいた生徒を連れ戻そうとして起きた事件のようです。
警察官でない一般人が逮捕することを常人逮捕、あるいは私人逮捕と呼びますが、珍しいケースです。

「暴力に及んだら逮捕される」ということは当然です。
不思議なことに生徒が教師を殴って逮捕されたというニュースはよく目にしますが、逆に教師が生徒を殴って逮捕されたというケースはあまり目にしません。
日頃、いじめ相談を受けていると、警察は、なぜ生徒には厳しいのに、教師には甘いのだろうと感じています。

先日も、服装がだらしないということで、「顧問の先生から殴られた」という相談がありました。
この生徒からの相談は、「殴られたのは、自分が悪かったから、しょうがないと思う。
でも、転んでボタンがとれてしまって、止められなくなっただけなのに。
いつもちゃんとしているのに、理由も聞いてくれないし、試合にも出してくれない」というものでした。

学校という場であろうとなかろうと暴力に及んだら教師であっても逮捕されてしかるべきです。
しかしながら、教師による体罰で、懲戒処分を受けたというニュースはありますが、教師が逮捕されたという事案はほとんど聞いたことがありません。

10月2日には、このようなニュースもありました。
2009年、大分県の高校生が部活動中に死亡した事故に伴い、両親が、県に命じられた賠償金など約2755万円を元顧問らに請求するよう県に求めた訴訟の控訴審判決で、県側の控訴を棄却し、1審の元顧問に賠償金100万円を請求するよう命じた判決を支持したとのことです。
2009年当時の報道によると、
『顧問は助けるどころか「演技じゃろうが」と言って、生徒の体を前蹴り。
生徒は自分で、防具をはぎ取るように外し、壁に頭をぶつけて倒れた。
それでも元顧問は馬乗りになり、
「これが熱中症の症状じゃないことは、俺は知っている」などと言いながら頬に約十発、平手打ちを加えた。
生徒は嘔吐(おうと)して反応しなくなり、その夜に亡くなった』(東京新聞)とあります。
このような状況でも、刑事事件になっていないのです。

両親は「公務員がその職務を遂行する際に、過失によって他人が損害を受けたときには、国や自治体がその賠償責任を負う」と規定された「国家賠償法の壁」に阻まれ、直接的に顧問の責任を追求できなかったのです。
そこで顧問の責任を問うために、裁判を起こし、「県は、県が支払う賠償金の一部を顧問に負担させよ」と求めたのです。

ここまでの暴力行為がなぜ刑事事件として扱われないのか、法律に不備がある、あるいは法の運用に問題があると言えます。
教師による体罰や暴力が「教育上必要な指導」、「容認されるべき行為」として扱われ、犯罪が黙認されているような状況は、変えなければなりません。
本来、成年した分?ある大人が暴力を振るうことのほうが罪は重いのです。
公務員だから許されるなどということはあってはならないことです。
生徒の範たるべき教師だからこそ、なお一層のこと生徒の範たらねばなりません。

10月、楽しいこともたくさんあることと思いますが、その分、子供たち同士での小さな衝突も起きやすい季節です。
結果、いじめ相談も多くなってまいります。

いじめで困っている子供たちをみかけたら、声をかけてあげてください。
お子さんが落ち込んでいるとか、朝方までふとんにくるまってネットしているとか、そんな兆候が出てくるようでしたら、やや危険領域に入っています。
不安に思うことなどありましたら、どうぞ、ご相談ください。

いじめから子供を守ろう ネットワーク

代表 井澤 一明