2012年2月の代表メッセージ

■□「いじめを訴える」ということ□■
 寒い日が続きますね。ところによっては、大雪に見舞われている方もいらっしゃることでしょう。
 そのような厳しい寒さの中、受験期を迎えた子供たちは、毎日を精一杯、頑張っていることと思います。

 さて、私たちは、いじめ相談を受けているのですが、相談者の中には「訴訟したい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
 しかしながら、実際に訴訟を起こすことはとても困難です。
 特に気になるのは、判決がでるまでに長い時間がかかってしまうことです。
 でも裁判に頼らざるを得ない場合も出てくるかもしれません。先日、こんな記事を見かけました。

 読売新聞の「おとなの法律事件簿」という特集です。
 ここに「小学校で息子が同級生のいじめで大ケガ 法的手段は?」という記事が掲載されていました。
 (http://www.yomiuri.co.jp/otona/life/law/20120124-OYT8T00641.htm)
 いじめ問題を考える際の参考になるかと思いますので、簡単に紹介させていただきます。

 質問内容は「公立小に通う息子(10歳)が、昼休みに同級生にバットで殴られて全治2ヶ月の大けがを負ったのです。
 その子からは日常的にいじめを受けていました。誰に対して損害賠償、慰謝料を請求できますか?
 私たち夫婦も精神的に大きなショックを受けたので慰謝料を請求したい。学校にも請求できますか?」というものです。

 弁護士の方が答えているのですが、要点をまとめますと、
 1. 被害者本人に賠償請求する権利がある。被害者が未成年なので実際は両親が賠償請求することになる。
 2. 加害者が10歳であるので、加害者本人に対しては賠償の請求はできない。
 3. 加害者の両親に監督義務責任を追及し、賠償を求めることができる。
 4. 過去の判例をみると被害者の両親が苦しんだことへの慰謝料は認められにくい。
 5. 学校側に対しては責任を追及することは可能である。
 となっています。

 特に、中学3年生の暴行傷害事件に関する、大阪地方裁判所平成7年3月24日判決を引用して、学校の責任について言及しています。

 それによりますと
 「学校側は、日頃から生徒の動静を観察し、生徒やその家族から暴力行為(いじめ)についての具体的な申告があった場合はもちろん、そのような具体的な申告がない場合であっても、一般に暴力行為(いじめ)等が人目に付かないところで行われ、被害を受けている生徒も仕返しをおそれるあまり、暴力行為(いじめ)等を否定したり、申告しないことも少なくないので、学校側は、あらゆる機会をとらえて暴力行為(いじめ)等が行われているかどうかについて細心の注意を払い、暴力行為(いじめ)等の存在が窺われる場合には、関係生徒及び保護者らから事情聴取をするなどして、その実態を調査し、表面的な判定で一過性のものと決めつけずに、実態に応じた適切な防止措置(結果発生回避の措置)を取る義務があるというべきである。
 そして、このような義務は学校長のみが負うものではなく、学校全体として、教頭をはじめとするすべての教員にあるものといわなければならない。」
 と裁判所は述べているのです。

 要約すると、学校には、
 1. 申告の有無にかかわらず、いじめ等が行われていないか細心の注意を払うべきこと。
 2. いじめ等の可能性があるならば、実態を調査するべきこと。
 3. 適切な防止措置を取る義務がある。
 4. この義務は学校長のみではなく、学校全体として、すべての教員に義務がある。
 以上の義務があるということです。
 これが「安全配慮義務」と言われるものの中身だと理解してもよいということだと思います。

 いじめを解決して欲しいのに、「子供同士の問題ですから」などと学校がいじめを放置するようでしたら、ぜひこの判例を基に、法的に間違っていることを学校に伝えてみてください。
 近頃は、学校側が「いじめの証拠を持ってきてください」と言ってくる場合もありますが、本来、学校のなすべき義務であるのです。

いじめから子供を守ろう ネットワーク

代表 井澤 一明