2015年12月の代表メッセージ

■□ いじめに少人数学級は有効か □■

今年もまもなく終わろうとしています。
受験生にとってはそれどころではないかもしれませんが、街にはイルミネーションが輝き、年末気分を盛り上げてくれています。

さて、財務省と文科省の間で、教職員の削減についての戦いが起きているようです。
財務省が、公立小中学校の教職員の定数を今後9年間で約3万7千人減らすよう文部科学省に求めていく方針を示したことが発端です。

2024年度には小中学生が、現在夜の94万人少ない875万人に減ることが予測されており、財務省は、10クラス当たりの先生の数をいまと同じ18人に据え置いても、24年度の教職員数は3万7千人減らせるとしたものです。
教職員の削減により、人件費の国負担を780億円削れると試算したとのこと。
これに対して文科省は24年度までに5千人の削減にとどめる方針を出しており、財務省案に強く反発しています。
文科省は、相次ぐいじめや不登校などへの対応のため「学校の厳しい実態を無視した非現実的なもの」、「すでに教員の負担は限界」としている。

確かに両省の言いたいことはわかる気がします。
教員一人当たりの生徒数については、世界の中でも日本は高いということもあり議論が続いております。
しかし、現在の教師一人当たりの人数は、各県ごとにまちまちです。

総務省の「日本の統計2015」によれば、本務の教員で見ると小学校では、神奈川、埼玉が一人当たり19人と多く、高知、徳島、島根が11人台となっています。
中学では、神奈川、愛知、東京で16人台、低いところでは、島根、高知が9人台となっています。

この数字を見る限り、教師一人当たりの人数と学力に相関関係があるようにはみえません。
結局、文科省、財務省のバトルは、予算の問題だけなのだと思います。
本来、国として考えなければならないことは未来のこの国のあり方のはずです。
方向性として、教育の力によって、どのような人材を社会に送り出すのかという姿勢が問われているのです。
学力低下の問題やいじめ問題が多発する現在の教育の問題は、人数の問題では絶対にありません。

日本教育技術学会の会長でありTOSS代表の向山洋一先生は、産経の記事の中で「問題なのは、教師の指導力の質である」とのべておられます。
具体的に調査した結果「担任別に学力ははっきりと違った」ことを報告しています。
また向山先生によると「クラスの人数が少なければ少ないほど教育効果があるのであれば、僻地(へきち)、離島などで担任一人、子供一人の学級の子は、学力テストなどで高得点をとるはずだが、そうはならない」、「学級は、集団があってこそ、教育効果が高い面もある」、「クラスの中では『できない子』は『できる子』から学んでいるのである。
算数だけではなく、鉄棒も野球も絵も、上手な子を見て、学ぶのである」と教育の現実について指摘されています。

私たちはいじめ相談を受け、多くの先生たちとも話し合っています。
その中で感じることは生徒指導のみならず学力指導の面においても、教員の質こそが、教育再生の鍵だということです。

教員の採用や、教員免許において学力でのみ計られているように見えます。
「教える技術」と「自分が知識を持っていること」とは、明らかに別の能力です。
運転免許のように実地試験がいるのではないでしょうか。
「仮免があって、本免がとれる」というように教える能力も判定すべきです。
教師として必要な能力を育てるシステムこそ、今の日本に必要な改革のはずです。

そうは言っても「いじめ」は待ってくれません。
毎日、毎日、いじめの相談にのり、いじめ解決を繰り返しながら子供たちにとって日本の教育がより良くなるために力を尽くしていきたいと考えております。
いじめや不登校、少し気になる学校の様子など気になることがありましたらご遠慮なくご連絡ください。

【参考】産経新聞記事
http://www.sankei.com/life/news/151125/lif1511250013-n1.html

いじめから子供を守ろう ネットワーク

代表 井澤 一明