善悪を教える

今の学校には「正しさ」が消えた

■「指導ではなく支援」は、おかしい
 今、多くの先生方の間で、生徒に対する教育方針で、謝った考え方が広がっているようです。それは、先生は生徒に対して指導するのではなく、支援するのだ。という考え方です。
 「総合」という授業が導入されてから、よりいっそうこの考え方が広がってしまったようです。
 生徒の自主性を尊重し、教師が方向性を示すのではなく、生徒の考え方で授業を進めていく。というものです。
 これは、一見とても大事な考え方のように思うかも知れませんが、授業には、本来の目的、方向性というのがあって、その目的に向かって進めていかなければならないものであるのですが、生徒の自主性を尊重するあまり、授業の目的が達成されず、君たちが考えたことだからということで、無駄な時間を過ごしてしまうと言う結果に陥っているのではないでしょうか。

■善悪を教えられていない子供たち
 この考え方には、もう一つの過ちが存在します。
 それは、指導しないと言うことにより、物事の価値観を生徒に教えていないということです。ようするに、価値観を教えると言うことは、指導に当たり、それは、やってはいけないことだ、という考えなのです。
 しかし、大人になって社会で生きていくためには、最低でも善悪の価値基準というものは知っておかなければならないものだと思います。しかし、この大切な善悪の価値基準でさえ、今の子供たちは教わっていないのです。

■善悪は何故大切か-いじめがはやる理由
 善悪の価値基準を教えてもらっていない子供たちは、「していことと、悪いこと」の判断が出来ません。このため、無法地帯になっている学校も少なくありません。
 これは、いじめにおいても、いじめる子が悪いことをしているという自覚がない、ということになります。
 やはり、善悪の価値基準を明確にし、「外の世界でしてはいけないことは、学校の中でもやってはいけない」ということを教えなければならないのです。
 いじめは犯罪です。善悪の価値基準が明確になれば、生徒にもそれがわかります。善悪を知るということは、皆が平和に生きていくためにとても大切なことなのです。

■モラル・ジレンマ法教育の問題点
 価値基準が教えられない状況で、今、道徳の授業では次のような授業が行われています。
 「お母さんが病気になりました。でも貧しいので薬が買えません。そこで、薬局から薬を盗んでしまいました。—-こういう場合、どう考えればいいでしょうか?」ということを題材に生徒に考えてもらうというものです。これが、モラル・ジレンマ法による道徳授業です。
 生徒たちは、それぞれ意見は出しますが、先生はそれに対して「いろんな意見が出ましたね。今日はここまでにします。」で終わらせてしまうのです。これでは、何が正しくて何が悪いことなのかがわかりません。
 中京女子大学名誉教授の加藤十八氏も、規範意識の醸成のためには善悪の判断を教えることが大切である。貧しさから泥棒をする行為をどう考えるか、などを生徒に問う、善悪をはっきりさせない「モラル・ジレンマ法」は排除すべきである。と述べられております。

■会津藩の「什の掟」
 白虎隊で有名な会津藩には、日進館という藩校がありました。9歳になればどんな下級武士の子でも無料で入ることができました。この日進館に入る前の5~6歳から9歳までの間に家庭や地域で子供たちを躾けたものが、次の「什の掟」というものです。
一、年長者の言うことに背いてはなりませぬ
二、年長者には御辞儀をしなければなりませぬ
三、嘘言をいふ事はなりませぬ
四、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
五、弱い者をいぢめてはなりませぬ
六、戸外で物を食べてはなりませぬ
七、戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ
ならぬことはならぬものです。
七か条の教えと、最後に「ならぬものはならぬものです。」で結んでいます。
 この様に、人としてしてはいけないことを明確に教え、正しい方向へ子供を歩ませてこそ、本来の教育の姿ではないでしょうか。

■特効薬「ゼロトレランス-毅然とした教育」について
 荒れた学校を建て直すために1990年代の米国で浸透した教育理念として「ゼロトレランス」があります。
 生徒指導で明確なルールを学校が示し、違反した生徒に罰則を科すことで規律を高める指導理念です。
 明確な価値基準の下、毅然とした方針で教育が行われることになります。
 文部科学省でも平成18年5月に、このゼロトレランスを導入する考えを示しました。2年以上がたち、この理念を教科指導に取り入れて進学実績を伸ばす学校が現れるなど、その広がりを見せているようです。

■善悪・正しさとは何かを教える教育を求めていく
 これからの未来を担う大切な子供たちに、善悪・正しさをきちんと理解させることはとても大切なことです。健全な人格を育むためにも、学校教育において、善悪・正しさの価値基準を教えていくことが、子供たちの将来において、重大な意味を持ってくると思います。
 私たちは、この活動を通して、学校現場へ価値基準の大切さを訴えて行きたいと思っております。子供たちの未来を輝かしいものにするために、皆様方のご協力をお願いいたします。