今月の代表メッセージ

11月の代表メッセージ


☆2025年11月15日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ いじめ認知件数過去最大を考える □■

最近は、秋を感じる時間が短くなったように思います。
紅葉がはじまる間もなく冬が到来しそうです。

さて、10月29日、文科省は、
「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」を公表し、
その中で、昨年度のいじめ認知件数が、過去最多の76万9千22件にのぼることとされました。
毎日新聞は、
「いじめ認知件数、重大事態ともに過去最多 SNSで被害潜在化」という記事を掲載しています。
以下、一部を引用します。
——-
文部科学省が29日に公表した2024年度の「問題行動・不登校調査」で、
小中高と特別支援学校でのいじめの認知件数が
前年度比5.0%増の76万9,022件と過去最多を更新したことが判明した。
心身に深刻な被害が生じている恐れがある重大事態の発生件数は同7.6%増の1,405件で、
こちらも過去最多となった。
(中略)
いじめの認知件数は4年連続の増加となり、
調査対象の3万6,003校のうちいじめを認知した学校は83.9%を占めた。
校種別では小学校で61万612件、中学校で13万5,865件、高校で1万8,891件、
特別支援学校で3,654件だった。
(中略)
自殺した児童生徒は前年度から16人増の413人だった。
自殺した児童生徒が置かれていた状況は「不明」が234人で最多。
「精神障害」が58人、「家庭不和」が46人と続いた。
——–

文科省は、この調査結果について
「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」にて
見解を公表しました。
以下にその内容をまとめてみました。

【いじめ認知件数について】
1. 小中高・特別支援学校での認知件数769,022件 36,454件増 過去最多
2. 認知学校数30,204 校 83.9%(前年83.6%)横ばい
3. 年度末時点で「解消していた」いじめ 585,349件 76.1%(前年77.5%)やや低下
4. 重大事態 1,405件(前年度1,306件) 99件増・過去最多
5. 発見のきっかけ
・「アンケート調査など」48.0%、「本人からの訴え」は19.6%、
「保護者からの訴え」は13.9%、「学級担任が発見」は9.3%
6. 相談状況は「学級担任に相談」が81.6%
7. パソコン・携帯電話等でのいじめ27,365件(前年度24,678件)
8. 自殺した児童生徒413人(前年度397人)極めて憂慮すべき

●いじめ認知件数の増加の理由については
いじめ防止対策推進法のいじめの定義やいじめの積極的な認知の理解が広がった。
端末による「心の健康観察」、アンケートや教育相談の充実などによる児童生徒に対する見取りの精緻化、
ネット上のいじめの積極的な認知が進んだ。
●「いじめの重大事態」増加については、
増加の背景として、いじめ防止対策推進法の理解、ガイドライン改訂による積極的な認定、
保護者の意向を尊重した対応が考えられる。
一方、いじめの兆候を見逃しなど早期発見・早期対応への課題がある。
個々の教員が一人で抱え込んでしまうなどの課題がある。
重大事態のうち490件(34.9%)(前年度490件、34.9%)は、
重大事態として把握する以前は、いじめとして認知されていなかった案件。

【不登校を含む長期欠席について】(注)
1. 小中学校・長期欠席者は50万6,970人(前年度49万3,440人)
2. 高校・長期欠席者数は10万3,608人(前年度10万4,814人)
3. 小中学校・不登校数は35万3,970人(前年度34万6,482人)
4. 小1・中2の不登校数は減。小中学校での不登校継続率、増加率は減。
5. 不登校増加の背景として、
・児童生徒の休養の必要性を示した「教育機会確保法」(「義務教育の段階における
普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」)の浸透。
・コロナ禍の影響による登校意欲の低下。
・配慮を必要とする生徒に対する適切な指導や支援に課題があった、等が考えられる。
6. 不登校の理由
・「学校生活に対してやる気が出ない等」(30.1%)、「生活リズムの不調」(25.0%)、
「不安・抑うつ」(24.3%)、「学業の不振や頻繁な宿題の未提出」(15.6%)

【暴力行為について】
1. 小・中・高の暴力行為の発生件数12万8,859件(前年度10万8,987件)、
前年度から1万9,872件(18.2%)増加し、過去最多となった。
2. 児童生徒1,000人当たりの発生件数は10.4件(前年度8.7件)。
3. いじめの認知に伴うもの、児童生徒に対する見取りの精緻化によって把握が増えた。
4. 一度暴力行為を行った児童生徒へのアセスメントに基づく対応への課題等があった。

私たちとしては、コロナ問題の影響が薄れてきて、コロナ以前に戻りつつあると考えています。
ただ、いじめの認知件数そのものについては、まだまだ実態には届いていないと言えます。
山形県のいじめ認知件数は11.731件、千人あたりの件数は117.2件でしたし、
新潟市のいじめ認知件数は13,015件、千人あたりの件数は230.8件となっています。
この千人あたりの数値を全国の小中高の児童生徒数(約1,209万人)に換算すると、
それぞれ約141万、約279万になります。
しかも、いじめ認知件数約77万件のうち、小学校が約61万件となっています。
中学は13万5,865件とのことですが、実態はこんなに少なくないでしょう。
やはり、いじめ認知件数の数値は、実態に近づいてきているとはいえ、まだまだ足りないように見えます。
現状の相談状況からも、いじめ問題は増えつつあるように感じています。
不登校問題についても、文科省の発表した数字からはみえませんが、
いじめによって不登校になっている子の数はかなりの数にのぼるのではないでしょうか。

最後に「重大事態」に認定された数も過去最多と増えていますが、
相談案件からは、重大事態の認定が早めに行われるようになってきていると感じます。
確かにいじめ解決に向かう大きな一歩ではありますが、
重大事態に認定した学校の中には
「この問題は第三者委員会に話してください」とか「弁護士さんを通してください」と
被害者や、被害者の保護者からの相談を無視するような学校があります。
今、現在、学校に在籍している子らに対してのあまりにひどい仕打ちです。
このようなケースがお近くにありましたら、早めにご相談いただければ幸いです。

間もなく冬が到来します。
子供たちにとっての楽しみも多くあると思いますが、その時間を
いじめの無い時間と空間にしてあげたいものですね。
何か気になることがございましたら、早めにご連絡ください。

(注)
・この調査での「長期欠席」とは、
年度間に30日以上欠席した児童生徒数を理由別に調査。(不登校を含む。)
欠席の理由は、「病気」、「経済的理由」、「不登校」、「その他」。
「その他」の具体例は、保護者の登校についての無理解、家族の介護、
外国での長期滞在、連絡先不明等。
・この調査での「不登校」とは、
何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、
登校しない、あるいは、登校したくともできない状況にある児童生徒を計上。
(ただし、「病気」や「経済的理由」による者を除く。)

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

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