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今月の代表メッセージ

2月のメッセージ


■□ 学校にとっては暴力より「いじめ」が問題 □■

節分です。
春はもうすぐですが、もう少し寒い日が続きそうですね。

さて、沖縄の中学生の暴行動画がネット上に流出し、問題となっています。
撮影場所は校外で、1人が暴行を加え、2人が動画を撮影し、4人に取り囲まれての事件です。
動画は約2分で、1人の生徒が全く抵抗しない男子に殴る蹴るを繰り返す様子が撮影されています。
沖縄タイムスの報道によれば、
「教委は事実関係を調べ、いじめとはみていない。学校側は、加害者とその保護者に指導を行ったと説明している。」とあります。
この報道を受けて批判が殺到しており、この件で、アイティメディア社の「ねとらぼ」編集部は中学校長に取材したとのことで、以下に引用してみます。

◆◆◆
・被害生徒と加害生徒らは小学校時代からの友人関係であり、中学進学後も家族ぐるみでの付き合いが続いていたとのこと。
 一方的ないじめなどに発展したことなどは今回の事案以前には確認されておらず、「文句を言った」「言わない」といったささいなトラブルが原因で暴行へと発展したとみている。
・また校長は、「いじめとはみていない」と報道されていることについて、「いじめとは集団などで長期的に1人を対象に行ういやがらせなどを指し、今回がそれに該当するのかどうかについては難しい。
 友人間のトラブルとみている」と複雑な心境を明かした。
・市教育委員会・指導課を取材したところ、本件については「いじめという認識をもち、対暴力について事実確認及び指導を行っている」とした。
 この事案について沖縄タイムスが「同級生を暴行、動画で拡散 教委『いじめとみていない』」と報じ、本文中で「中学校がある自治体の教委は事実関係を調べ、いじめとはみていない」としたことについては、「私(担当者)の言葉足らずがあるかもしれないが、事実ではない」と否定した。
◆◆◆

この校長の頭のなかにある「いじめ」の定義は、平成18年(2006年)度以前の「継続的である」ことが条件であった時代のものであることがわかります。
「いじめ防止対策推進法」の中で「いじめ」が定義されている現在、教師、ましてや校長が定義を理解していないのは、職務怠慢というべき状況です。
結局、学校長は「いじめではない」と言いたいだけのように聞こえます。

私たちも数多くのいじめ相談を受けておりますが、学校において「いじめでなければ良いんだ」という考え方が増えているように思います。
前述の沖縄の事件は、「いじめ」というよりも「リンチ事件」です。
加害者は、「暴行罪」であり、「傷害罪」に問われて当然ですし、一般的ないじめよりも「悪質」です。

しかし、このように考えるのは、「普通の人」であり、学校は違うようなのです。
実際、暴力を含んだいじめの相談を受けて学校側に解決してもらうようにお願いすると、
「これはいじめではありません。ケンカです」
「これはいじめではありません。暴力です」
「これはいじめではありません。ふざけているだけです」
等々の言葉が返ってきます。
問題を抱えた学校の先生たちにとって不思議なことに、暴力事件や傷害事件よりもいじめは「認めがたい事件」なのです。

なぜ、こんなことになるのでしょうか。
暴力事件や傷害事件が起きた場合は、一般的に、学校の責任を追求されにくい案件だからかもしれません。
マスコミの報道でも、加害者の責任は追及されますが、学校の責任が問われることはあまりありません。
しかし、「いじめ事件」となると日頃の生徒指導や学級経営、アンケートの実施状況など、学校の対応について言及されることになります。
これは「困ったこと」なのでしょう。
しかし、これでは「教師、校長の仕事を果たしている」とは言えないことに先生たちは気付いているのでしょうか。
「事なかれ主義」の考え方を教育の世界から追放しなくてはならないと強く感じています。

先日、出会った教師は、「そもそもいじめに対処する責任が教師にあるのでしょうか。法律には書いてないでしょう」と話していました。
確かに「教育基本法」には明文化されておりませんが、過去の判例において「学校は安全配慮義務を有する」ことが明らかです。
さらに、「いじめ防止対策推進法」には、学校及び学校の教職員の責務として、
「第八条 学校及び学校の教職員は、基本理念にのっとり、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、児童相談所その他の関係者との連携を図りつつ、学校全体でいじめの防止及び早期発見に取り組むとともに、当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。」
と記されています。
教師には、法律的にもいじめに対処する責任があるのです。

「教師はいじめに対処しなくていい」という先生がいる一方、「学校でいじめがあれば、それは我々、教師の責任です。いじめは許しません」と話してくださる先生方もいます。
文科省や教育委員会は「いじめではありません」などと責任逃れをする教師ではなく、「いじめは教師の責任だ」と言う先生を育てていただきたいのです。
そのためにも、教師によってまちまちな生徒指導能力に頼るのではなく、どの先生であっても一定の問題解決能力、生徒指導能力を獲得できる教員研修を実施していただきたいと考えます。
教師の自覚と訓練こそ、現代の教育者には不可欠です。

いじめの相談が相次いでいます。
不安に思ったり、疑問に思ったりすることがありましたら、ご遠慮無くご連絡ください。

いじめから子供を守ろう ネットワーク

代表 井澤 一明


 【過去の代表メッセージ】
 2017年1月の代表メッセージ『1.いじめ撲滅に向けて、2.「いじめ」はなぜ起きる?』
 2016年12月の代表メッセージ『学校を通さずに「重大事態」の報告できるシステムを!』
 2016年11月の代表メッセージ『いじめの実態といじめ認知件数』
 2016年10月の代表メッセージ『被害者ファースト』
 2016年9月の代表メッセージ『子供たちが不安になる季節』
 2016年8月の代表メッセージ『「生徒指導支援資料6“いじめに取り組む”」に学ぶ』
 2016年7月の代表メッセージ『リフレッシュ』
 2016年6月の代表メッセージ『生徒自身によるいじめ対処の実践』
 2016年5月の代表メッセージ『捏造もありえる? 学校主体の調査委員会』
 2016年4月の代表メッセージ『「お互いを知る」からいじめが起きる』
 2016年3月の代表メッセージ『いじめによる後遺症を残さないために』
 2016年1月の代表メッセージ『新年にあたって』
 2015年12月の代表メッセージ『いじめに少人数学級は有効か』
 2015年11月の代表メッセージ『学校は治外法権ではない』
 2015年10月の代表メッセージ『「教師の力」が教育の力となる』
 2015年9月の代表メッセージ『「大阪市いじめ対策基本方針」に教師の懲戒処分』
 2015年8月の代表メッセージ『パソコンが原因?』
 2015年7月の代表メッセージ『1.「人としての誇り」を育てたい、2.自殺するぐらいなら学校に行かなくてもいい』
 2015年6月の代表メッセージ『「学校は警察じゃない」に反論しよう』
 2015年5月の代表メッセージ『5月は、不安な時期。支えてあげて欲しい』
 2015年4月の代表メッセージ『言うべきことは言おう』
 2015年3月の代表メッセージ『道徳教育のモラルジレンマ』
 2015年2月の代表メッセージ『フィンランドの教師が語る「家で教えて欲しいこと」』
 2015年1月の代表メッセージ『新年を迎えて』
 2014年12月の代表メッセージ『相談、続々の12月』
 2014年11月の代表メッセージ『35人学級?』
 2014年10月の代表メッセージ『警察庁統計発表によせて』
 2014年9月の代表メッセージ『やればできる』
 2014年8月の代表メッセージ『いじめと戦おう』
 2014年7月の代表メッセージ『不登校ゼロの学校があった!』
 2014年6月の代表メッセージ『子供ができるいじめ対処』
 2014年5月の代表メッセージ『子供の無限の可能性を信じよう』
 2014年4月の代表メッセージ『あきらめない』
 2014年3月の代表メッセージ『教師に道徳教育を』
 2014年2月の代表メッセージ『国境を越えて、いじめをなくそう』
 2014年1月の代表メッセージ『新年にあたって』
 2013年12月の代表メッセージ『いじめと学力』
 2013年11月の代表メッセージ『フリースクールより転校を!』
 2013年10月の代表メッセージ『「いじめ防止対策推進法」施行』
 2013年9月の代表メッセージ『子供たちにスマホ時代が来た!』
 2013年8月の代表メッセージ その2『いじめの原因は家庭?』
 2013年8月の代表メッセージ その1『実効性が薄い「いじめ防止対策推進法」』
 2013年7月の代表メッセージ『いじめ自殺をなくしたい! 参院選立候補表明』
 2013年6月の代表メッセージ『戻りつつあるいじめ対応』
 2013年5月の代表メッセージ『スクールカースト?』
 2013年4月の代表メッセージ『「文書」こそ、いじめ解決の王道 』
 2013年3月の代表メッセージ『子供たちのために 』
 2013年2月の代表メッセージ『ならぬものはならぬものです』
 2013年1月の代表メッセージ『さあ2013年』
 2012年12月の代表メッセージ『書籍紹介「いじめを絶つ! 毅然とした指導3」』
 2012年11月の代表メッセージ『「本気の先生」を応援したい』
 2012年10月の代表メッセージ『可児市いじめ防止条例施行』
 2012年9月の代表メッセージ『学校が変わった?』
 2012年8月の代表メッセージ『子供に元気を』
 2012年7月の代表メッセージ『責任の明確化』
 2012年6月の代表メッセージ『もうすぐ夏休み?』
 2012年5月の代表メッセージ『「なぜ日本の教育は間違うのか」(扶桑社刊)に思う』
 2012年4月の代表メッセージ『自律心を大切に』
 2012年3月の代表メッセージ『春休みを前に…』
 2012年2月の代表メッセージ『「いじめを訴える」ということ』
 2012年1月の代表メッセージ『新しい年を迎えて…』