2020年6月の代表メッセージ

6月の代表メッセージ

☆2020年6月12日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ 新学期のスタート □■

沖縄は梅雨明けしましたが、全国的には梅雨ですね。
激しい雨とともに、蒸し暑い季節がやってきました。

4月に新学期を迎えたはずなのですが、
新型コロナウィルスの影響を受けたために、多くの子どもたちにとっては、
この6月が新学期のスタートになりました。
あまりにも長い春休みでしたが、やっと終わりました。
ただ、始まりましたものの校内では、近づかない、大声で話さない、マスクをつけるなど
本来の姿とは言えない状況です。

さて、大島商船高専が、今年3月に第三者委員会がまとめた最終報告書を、
6月9日にホームページで公表したという報道がありました。
やっとです。

NHK NEWS WEBの報道によりますと、
国立の大島商船では、3年前、いじめの被害を訴えた男子学生が自殺を図り、
調査を進めてきた第三者委員会は、ことし3月、学生に対する暴力やインターネット上での悪口など、
合わせて14のいじめを認定した最終報告書をまとめました。
学校は、この最終報告書について、個人が特定できるような名前や発言などを黒塗りにしたうえで、
86ページからなる全文を、9日、ホームページで公開しました。
報告書では、
▼教職員が「男子学生がいじめの原因を作っている」などと発言したことや、
▼いじめに関するアンケートを誤って破棄したことなど、
学校の問題点も指摘していて、
学校は、今後、学生側の意見を聞きながら再発防止策をまとめることにしています。

また、設置者の国立高等専門学校機構(東京都)は、
いじめ対策の実務的な指針とするガイドラインを策定し、全51校に通知を出した。
同校の第三者委員会がまとめた最終報告書での提言に対応した。
と毎日新聞が報道しています。

最終報告書を隠さずに公表したことについては、大変に素晴らしい決断だと言えます。
しかし、その裏では、公表を渋っていた高専に公表を求めた被害者のねばり強い交渉があったと聞いています。
また、国立高専機構が全国に通知するというところまできたという意味では
被害者、そしてそのご家族の皆様の勇気ある行動が「国を変えた」のです。
まだ、終わったわけではないと思いますが、ご家族の行動に敬意を表したいと思います。

ほんの少しですが関わってきた私たちも、改めて「調査報告書」を読みました。
被害者の視点をしっかりと捉え、大島商船の問題点、国立高専機構の問題点、改善点の指摘は
秀逸だと感じました。
しかし、ここに至るまでが悪すぎです。

学校が認識したのは、2017年の4月、いじめ自体はその一年も前の2016年5月末ぐらいから始まっていたのです。
報道によりますと、
「同校は遠方から入学する学生が多いことや、規律ある共同生活を送ることなどを目的に、
2年生までは原則として学生寮で生活することが義務付けられている。
被害者らによると、いじめは被害者が入学した2016年4月ごろから始まり、
5月に被害者と同室の学生が自死したことをきっかけにエスカレート。
暴行を受けたり、被害者のコラージュ画像をSNSでばらまかれたりするなどの行為が繰り返され、
追い詰められた被害者は17年12月に自殺未遂した。
さらに、学校側は被害者の意思を無視する形で、いじめ調査を開始。
被害者の友人3人をいじめ加害者と事実誤認し、
突然授業中に呼び出すなどして、長時間にわたる事情聴取が行われた。
複数の教員が学生を取り囲み
「お前が少しでもうそをついたら、退学させることもできる」などの威圧的な言葉が浴びせられ、
出席できなかった授業の補講が行われなかったり、
一部の学生が恣意(しい)的に停学処分にされたりしたという。」
と伝えられています。

被害者を守ることが責務であるのにも関わらず、
あろうことか学校は、「いじめられる被害者が悪い」で押し通しました。
さらには被害者を支えていた友人たちに恫喝まがいの事情聴取し、
はては「懲戒処分」に処したのです。
加えて、報告書を読む限り、アンケートを紛失したのではなく、
証拠隠滅を図ったように見えます。
反面、本当のいじめ加害者には形ばかりの事情聴取で、加害者の言葉をうのみにしたという
とんでもない組織ぐるみの隠蔽が行われたことが、報告書には記載されております。
被害者側は、文科省にも、国立高専機構にも被害を訴えましたが、
「教育の自治」の名の下で何も進展しませんでした。
被害者が自殺未遂をするにいたり、なんとか第三者委員会が設けられたという事件です。
私も「高専」というやや変わった学校の卒業生の一人として「高専」に親近感を覚えるものですが、
「何やってんだよ!」と、この対応にはとても恥ずかしさを感じます。

これはひとえに大島商船の問題ではなく、高専機構を超えた「国立」の問題、文科省の問題と言えます。
学生を人権を持つ一人の人間として扱わない姿勢に問題があります。
仮にも「教授」とか「准教授」とか名のっている「教官」として恥を知るべきです。
大島商船としては、報告書を載せるだけでは不十分です。
ここまでひどい迫害とも呼べるような行為に対して、何もなかったで済ませるつもりなのでしょうか。
加害者側の学生に対する懲戒もあったとは聞いておりません。
被害者の友人に対し、恫喝、脅迫するなどの理不尽な振る舞いをした教官、そして校長自らの処分を行ってこそ、
本気で変わろうとしている姿勢を見せることになるはずです。
当然、国立高専機構も「通知しました」だけで終わらせるようであってはならない、
そのように考えます。
大島商船は「誰を守るのが学校の利益になるのか」を考えた結果の行動をとったといえます。
教育関係者は、「誰が正しいかではなく、何が正しいか」を示さなければなりません。

この事件はまだ終わったとは言えないような状況にあります。
本来、子どもたちにとって学校に行くことは、「楽しい」ことでなくてはなりません。
楽しくないから「不登校」を選択するのです。
さらには絶望し自殺を図ったりするような事件が起きるのです。
生徒を預かる教師には「当たり前のことを当たり前」にできる学校をつくる責任があります。
当たり前のこととは「いじめは絶対に許さない」ことであり、
被害者を「守り抜く」ことです。
そして「学習できる環境」をつくり出し、
「この学校に行って良かった」という喜びを語れる生徒を送り出してほしいと思います。
これができない学校は、存在しなくてもよいと言わざるを得ません。

さあ、学校が始まりました。
こんなとんでもない学校が出てこないことを祈りつつ、
私たちは、いじめ問題に取り組んでまいりたいと思います。
例年ですと5月の連休明けからいじめ問題が増えてまいりますが、
今年は6月末位から増えることが予想されますので、ご注意いただきたいと思います。
何か心配なことがありましたらご遠慮無くご相談いただければと存じます。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明


過去の代表メッセージ