2月の代表メッセージ
☆2021年2月13日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]
◇ 代表メッセージ ◇
■□ 大津いじめ事件の最高裁判断 □■
2011年10月に起きた滋賀県大津市のいじめ自殺事件。
すでに10年近くの歳月が過ぎ去りました。
2021年1月25日には、最高裁が上告を退け400万円の賠償命令が確定したとのニュースが流れました。
大津地裁は、自殺はいじめが原因だったとし、加害者2人に合わせて3700万円余りの賠償を命じましたが、
その後、大阪高裁は自殺の原因はいじめと認めましたが、賠償金については
1.両親が生徒を精神的に支えられなかったこと、2.大津市が和解金を支払っている等として、
賠償額をおよそ400万円としました。
今般、最高裁が、上告を退けることで、2審の大阪高裁の判決が確定したのです。
被害者の父は
「いじめは相手を自殺に追い込む危険な行為だと司法が判断したが、
息子が亡くなった9年3か月前は、そうは考えられていなかった。
事件は司法判断の流れを変え、被害者の救済に大きくかじを切るきっかけになったと思う。
判決がいじめ問題の解決につながっていくことを祈ります」
と話したことが報道されています。
また、原告側の弁護士は
「いじめで自殺することは特異的で、損害は通常生じるものとはいえないというのが、これまでの判例だった。
今回、高裁と最高裁が通常の損害だと認めたことで今後立証のハードルが下がることになり、
極めて先駆的な国内初の判例になった」と評価しています。
確かに「自殺の原因はいじめだった」と認定されたことは、
今後のいじめ事件による訴訟に対して、
大きな方向を提示したと言えます。
ですが、「いじめによって精神的に追い詰められ、自殺するまで追い込む」というパターンは、起きうることであり、
大津いじめ自殺事件の以前において、
「自殺の原因はいじめではない」との判断がくだされていたという現実があり、
それ自体が異常なんだと言わざるをえません。
司法関係者にとっては、それが常識なのでしょうが、
言わせてもらえば「やっと正常な判断を下せるようになったよね」というだけのことです。
ここまで来るのに、何年もかかり、多くの子供達の悲しみ、苦しみの上での判断だとするならば、
「遅すぎる」としか言いようがありません。
さらに、今回、「被害者の親にも責任があった」という判決のように見えるところがあります。
被害者の親だからと言っても、普通の人間のはずです。
感情もありますし、人生の中には言い争いや喧嘩をすることだってあったと思います。
完璧な人間などいないはずです。
「いじめられている子をサポートできなかったから、賠償額を減額する」などという、
とんでもない理論がまかり通って良いのでしょうか。
裁判官から見たら当たり前なのかもしれませんが、納得できません。
2017年の11月の日経新聞には、このような記事が出ています。
「名古屋市の青果仲卸会社の女性社員(当時21)が自殺したのは
職場でのいじめやパワーハラスメントが原因として、
女性の両親が同社と先輩社員2人に約6400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が
30日、名古屋高裁であった。
永野圧彦裁判長は自殺とパワハラの因果関係を認め、
賠償額を165万円とした一審・名古屋地裁判決を変更し、約5500万円の支払いを命じた。」
とあります。
この判決と大津いじめ事件の判決、
どうして大津事件の賠償額は400万円程度しか認められなかったのでしょうか。
中学生では自分で自分を守ることさえ難しく、
学校も守ってくれないという絶望の中で選んだ死であったのは明白だったと思うのです。
しかも市と和解したという理由で減額するということなど、
一般の価値観とは大きくずれているように思います。
賠償金額に対するやっかみでもあったのでしょうか。
高裁、最高裁の皆様には、この名古屋のパワハラと同等と感じられるような判断をして欲しかった。
その金額の多寡も、現在もいじめをしているような子供たちへの牽制にもなりますし、
教員の皆様にとっても、子供たちのいじめを止めるときの言葉の力ともなるはずです。
今回のこの最高裁の決定のニュースに接して、思うことは、
いじめは「早期発見・早期解決」が重要だと改めて訴えたいということです。
そのためには、何よりも「見て見ぬ振りをする教師、いじめを放置する教師」、
「いじめ加害者を指導しない、注意しない、叱らない教師」をなくさねばならないということです。
現在放映されている「青のSP」というスクールポリスを扱ったテレビ番組で、
主演の藤原竜也さんのセリフの中に、
「いじめは暴行、傷害、恐喝」という言葉、「いじめたやつは犯罪者だ」という言葉がありました。
私たちは「いじめは犯罪! 絶対に許さない」とポスターを貼り続けており、
ここまで浸透してきたんだという感慨もありますが、
何よりこの言葉は「教師」、つまり先生方が自信を持って子供たちに語っていただきたい言葉なのです。
大津の事件が大きな問題提起をなして「いじめ防止対策推進法」が成立しましたが、
この法律には、見て見ぬ振りをする教師に対しての処罰規定がありません。
いじめに知らん顔をしても、罪に問われないのです。
たとえ放置した生徒が自殺しても、罰せられないのです。
確かに教育委員会からの処分を受けることはありますが、不十分です。
国として、子供たちを守るという姿勢を示さなければ、子供たちを守る確率を少しでも上げるためには、
「ひどい教師は罰する」べきであると思います。
また逆に、「頑張っている教師」を評価するシステムもつくるべきです。
ぜひ、政治家の皆様のお力をお借りできれば幸いです。
もう2月です。4月には学年が上がり、クラス替えもあるかと思います。
被害を受けている子の保護者の皆様で、
「加害者の子と同じクラスは困る」と考えておられるようでしたら、
すぐにも学校と相談することをおすすめいたします。
間に合わなくなってしまいます。
なにかありましたらご遠慮無く、ご相談ください。
一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明