2021年9月の代表メッセージ

9月の代表メッセージ


☆2021年9月18日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ 見えてきたGIGAスクールの運用課題 □■

近年は9月に入っても暑い日が続くことが多く、今年も暑い秋だろうなと思っていたのですが、
涼しい9月となってしまいました。

今年の7月、ちば県民保健予防財団さんから声をかけていただいて、
サマーセミナーでお話をさせていただきました。
ちば県民保健予防財団さんは、千葉県内の小中高大学の生徒をはじめ、
市町村、企業などの健康診断・検診を行っていらっしゃる公益法人です。
サマーセミナーでは、小中高等学校の養護教諭及び教職員の皆様に向けて
毎年開催されていらっしゃるとのことです。
ただ今年は、コロナ禍の最中であり、ビデオ収録して8月末までのオンデマンド配信でした。
その中で、GIGAスクールの初年度に当たり、養護の先生方には
ネットや配布した端末を介したいじめを中心とする問題に気を配りつつ
子供たちを守っていただきたいとお願いをしてまいりました。

しかし、残念ながら、GIGAスクールの中でもうすでに小学生がいじめ自殺するという事件が起きていたのです。
その中で、あまりにもずさんな学校の対応が見えてきました。
子供の生命を犠牲にしてまで実験するんじゃないと言いたいのです。
ネットにおける問題は、もう何年も前から分っているのです。
ですから、明らかなシミュレーション不足、リスクマネジメントの欠如です。

9月13日、東京都町田市の小6女児が、2020年11月に自殺していたことがわかりました。
会見した両親によると、机の引き出しに複数のメモが残されており、2人の名前を挙げ
「おまえらのおもちゃじゃない」などの言葉がのこされていたとのことです。

いじめは「一人に一台端末を配布する」というGIGAスクール構想の先進モデル校として
昨年中には児童に端末が渡されていたのですが、この中でいじめが起きていたのです。
PRESIDENT Onlineの連載記事 (https://president.jp/category/c03341)によると
被害者本人がネットのいじめに気づいたきっかけについて、
「それは(加害者)二人だけのやりとりだけだったのですが、
(被害者の)パソコンの調子が悪くて、その時は仲良くしていたB子の端末を借りて作業したときに、
A子からB子に『まじキモイ』『ウザイ』『死ねばいいのに』などのメッセージが送られてきたのを
たまたま見てしまったようです。」とあります。
さらに、
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(自殺後の学校からの報告の中で)
学校側から、9月10日に実施した「心のアンケート」で、
「友達関係に悩みがある」と書いていたことを知らされた。
「A子とB子には言わないでほしいと言っていたそうですが、
担任のB先生は二人に伝えてしまったのです。
9月14日、放課後の委員会活動で3人が集まった時に、当事者だけで話し合いをしたそうです。
その時、A子とB子は謝罪していじめは解決したとB先生に報告したと言うのですが、
とんでもないと思いました。
(娘は)遺書を9月23日から書き始めていたからです。
当事者同士で話し合いをさせた結果、解決どころか、エスカレートしたのだと思いました」
———–
と母の言葉が掲載されています。
「加害者に伝えて、話し合い」など論外です。
事実を確認したならば、叱らなければなりません。
そして「話し合い」ではなくて、
「謝罪」させ「二度としない」ことを約束させなければ、いじめは解決できません。

また、
東京新聞の報道では
「その後、児童が作成し、一部に「(女児の名前)のころしかた」と題する絵が描かれたノートを
学校が保管していたことが判明。
2月に学校が独自の調査報告書をまとめていたことも分かったという。」
とあります。

萩生田文科大臣は
「(GIGAスクール、ICT教育)モデル校でパスワードなど管理があまりにずさんだった」、
「児童のいじめの一部が端末のチャット機能を使って行われていた」と説明。

先のPRESIDENT Onlineには、
「”ハッキング”というと大がかりな事件のようだが、
この学校ではIDは出席番号、パスワードは123456789と全員が共通だった。
だから、誰でもやろうと思えばA子のアカウントにログインして、
チャットの内容を見ることも消すこともできた。」とあります。

自殺した後、クラスでは不登校になったということにされてしまっており、
チャットの悪口を見たという子がいるのにもかかわらず
同じくPRESIDENT Onlineには、
母親がチャットの履歴を見せてほしいと学校に依頼すると
———–
「12月24日にA校長から電話がかかってきて
「チャットで悪口が書かれていたのは事実でした。
でも、私たちも不思議なんですが、履歴が消えています。
書き込んだと認めたA子さんも、『あれ、ない?』と戸惑っていました。
誰が消したかわからない、ハッキングにあったかもしれません」と報告があった」
———–
という証言が記載されています。
加害者側なのか学校側なのか、誰が実行したのかはわかりませんが、
「証拠隠滅」を図ったとしか見えません。
あまりにも悪質です。
学校は、亡くなった時点で証拠の保全を図らなければならないはずなのに、
この体たらくは、隠蔽に手を貸したのも同じです。

今年の6月に日経新聞には、
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「名古屋市、小中学生の端末使用停止 履歴収集に指摘」という記事が掲載されました。
名古屋市は10日、市内の小学校と中学校に対し、
在籍する小中学生に配布しているタブレットの使用を一時中止するように通知した。
市はタブレットの操作履歴ログを収集してサーバーで保管しており、
これが市の個人情報保護条例に違反している疑いがあるため。
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という記事が載りました。
これは危険です。
町田市の事件のように、
子供たちがどのようなやり取りをしたのかを記録することは、子供たちを守るためには必要です。
プライバシーよりも、いじめから子供たちを守ることの方が重要な仕事ですし、責任です。
GIGAスクールを構築するにあたっては、
ネットやコンピュータのセキュリティスキルが不十分な教師まかせであってはならないのです。
文科省は推進する以上、責任を持って臨むべきです。甘さが招いた悲劇だと言えます。
専門家レベルの知識が必要です。


改めて、この事件からは、GIGAスクールを導入する場合の問題点、課題が様々に見えてきました。
GIGAスクール構築の知識と、問題が起きる場合の予測能力、
リスクマネジメントの理解と知識の不足があります。
あまりにも初歩的な能力不足です。

また、この学校ではいじめ対応のスキルが不充分です。
教師の教育が足りていません。
いじめの加害者、被害者を話し合わせるという初歩的なミスを犯しています。
さらに経過観察を投げ出しています。
加えて、いじめ対応のスキルがないどころか
それ以前に、クラスの人間関係を調整するというクラス担任としての能力がなかったようにしか見えません。
会社で言うリスクマネジメント、クライシスマネジメント意識の欠如、
危機管理案件が起きたときの対応として、自己保存の欲を肯定し、
「隠蔽」、「顧客を黙らせよう」とするという最悪な手法をとったということが、
より被害者、被害者遺族の悲しみに追い打ちをかけています。

初期の対応を間違えなければ、防ぐことのできたいじめです。
その意味で教師の責任は大きいのです。
結局、子供たちの苦しみの声が理解できない教師の存在こそが、いじめ問題の中心にあるのです。
時機的には、いじめが増えはじめる時です。
皆様の周りで不安なことがありましたら、
すぐにでもご相談いただきたいと思います。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明


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