2021年12月の代表メッセージ

12月の代表メッセージ


☆2021年12月16日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ 寝屋川市のいじめ対策に学ぶこと □■

今年も12月になりました。
朝も冷え込んできています。
今朝は、家の近くの銀杏並木も紅葉の終盤を迎え朝日に輝いていました。
子供たちにとってはクリスマスは目の前です。
さらには、冬休み、お正月と続くイベントに期待をはせているのではないでしょうか。

先日、3月に旭川市の公園でいじめを受けていた女子中学生が凍死した事件を受けて、
旭川市長がいじめ防止に積極的に取り組む自治体を視察することにしたという報道がありました。
視察先の一つの寝屋川市では「監察課」を市役所内に設置しているとのこと。

寝屋川市の広瀬市長は2019年9月にTwitterで、
「初動対応を含め、いじめ問題への対応を教育委員会から市長部局に移します。
新たに設置をする部署は第三者的視点で関与する『監察部門』となります。
これにより、教職員の働き方改革も同時に進め、
学校現場ではより”予防”に注力し、
教育委員会と市長部局で役割を分割します」

また、市長はいじめが減らないことについて、
「これだけ、どの自治体でもいじめ問題が繰り返され、『再現性』があるということは、
個別の教師や教育委員会の問題ではなく、
手法としての『教育的アプローチ』そのものに限界があると考えるべきかも知れません」
とも述べて「行政的アプローチ」の重要性を訴えておられます。
さらに、
「寝屋川市では『監察課』が主軸になり、いじめの加害者側と対峙します。
また今議会で、市長に教育委員会等に『勧告』する権限を与える新条例を可決いただきました。
必要であれば市教委とも戦います。
被害者が戦うために弁護士費用の補助も行います。
ただし、最優先すべきは『子どもの平穏』です」
と発信しています。

まとめると、
1. 行政的アプローチのために、「監察課」を設けた。
2. 市長に「勧告権限」を与えた。
ということです。

確かに「教育委員会」の管轄外や、より上位にある組織から、
教委に対して「もの申す」ことができる組織が存在することは、
いじめ対処に効果があるとは思います。
その意味では、私たちの「いじめから子供を守ろうネットワーク」という外部団体が
保護者側に立って教育委員会や学校と話をさせていただくという活動とも性質は似ているようには思います。
寝屋川市の監察課のアプローチは、確かに効果的な体制だと思います。
しかし、あえて言わせていただきますと、
これでは「『教育委員会』そのものの存在自体に問題がある」と言っているのと同じではないでしょうか。
ならば「あるべき教育委員会」とはどうあるべきかということに対して議論を深め、
国として自浄能力がある体制にしてゆく努力が必要なのではないでしょうか。

例えば「警察」という組織には、外部ではなくその内部に「監察」という役割が含まれています。
そしてそれが正しく機能しているからこそ、信頼できる組織として認められているのだろうと思うのです。
教育委員会も、自らの内に「監察機能」を持ち、
それが正しく機能してはじめて、「教育委員会」が信用を得ることができるのだと思います。
とはいえ現行の教育委員会のもとでいじめが多発し解決できなくなっているということは事実ですし、
この状況が示しているのは、
「教育委員会」という現在の組織そのものがすでに
耐用年数を超えてしまっているということではないでしょうか。
寝屋川市のような教職員の人事権、懲戒権を有していない市区町村としては、
市長が「勧告権限」を持つことは、最善の体制かもしれません。
ただ国としての教育行政としては「いじめ隠蔽」や「いじめを解決できない組織」を
そのまま存続させ続けて良いわけはありません。
勧告ではなく「懲戒権限」が必要な時代です。
人事権を持つ自治体においては、条例として、
教育委員会や教職員に対しての懲戒規定の制定をお願いしたいものです。
国としても、教員の懲戒を法制化すべきです。
文科省は国としてこの問題にどう取り組むのかを、子供たちに、保護者に、具体策を示すことが必要です。

話は変わりますが、今年は一人一端末のGIGAスクールも本格的に始まりました。
先日、「学校配布のタブレットでいじめ14件」というニュースがありました。
新潟県内の小中学校で、学校が配ったタブレット端末を使ったいじめが計14件あったというものです。
いじめの内容としては無断で動画や画像を撮影して加工するなどであり、
新潟県教委生徒指導課の課長は、
「既にこれだけあることに驚いている。氷山の一角で、これが全てとは思えない」と
危機感を示していると報道されています。

当然のことながら、学校や教育委員会の対策が進まなければ、
来年は配布された端末を媒介としたいじめが増えていくのは確実だと推測されます。
結局、国がいじめの機会を増やしてしまったようにさえ見えます。
文科省は、GIGAスクールを提唱し、推進する以上は責任があります。
配布された端末でいじめが起きるならば、その責任は配布を決定した文科省、国にあります。
それらの問題が起きることのないような施策をとらねばなりません。

端末の管理も含めて先生方のやらなければならないことは増える一方です。
先生方が子供たちに向き合える時間や心の余裕を持つことができるようなシステム創りが早急に必要です。
寝屋川市の対策もその一つの答えではあると思いますが、
国として打開策を提示すべき時期なのだと考えます。

現在もいじめで不登校になっている子や苦しんでいる子がいます。
もうすぐ今学年最後の学期を迎えます。
三学期を迎えてしまってからですと、
「もうすくこの学年も終わりですから」と逃げを打つ学校が少なく有りません。
何か不安に感じていることがありましたら、早めにご相談いただきたいと存じます。

どうか来年が子供たちにとって良い年となりますよう心から祈念申し上げます。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

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