12月の代表メッセージ
☆2022年12月22日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]
◇ 代表メッセージ ◇
■□ いじめが増加傾向に □■
12月に入り、めっきり寒くなってまいりました。
師走ですね。
まもなく冬休みに入りますし、受験生にとっては追い込みの季節です。
ご家族の皆様もなんとなく忙しいと感じているのではないでしょうか。
いじめ相談を受けていると発達障害という診断を受けている子がいじめられるケースによく出会います。
12月13日に文部科学省は、
調査の結果、通常学級に通う公立小中学校の児童生徒の8.8%に発達障害の可能性があると公表しました。
これは、1クラスに約2人から3人という割合になります。
報道によると、10年前の前回調査からは2.3ポイント上昇し、
その約7割が「特別な教育的支援が必要」と判断されていなかったとしています。
その理由を文科省は、特別支援教育の知識がある教員が少なく、
適切な支援ができていない可能性があるとのことです。
この結果に対して、文科省は、この10年で広く一般でも発達障害への理解が深まったことを考えると、
上昇率は「高くない」と見ているとのことでした。
この調査は、公立小中学校の通常学級の5万3951人に対し、
学級担任らチェックシートに回答する形での調査で、
1.「学習障害」(LD)
2.注意欠陥多動性障害(ADHD)
3.高機能自閉症
の三項目について調べたものです。
また、学年別では、小1が12.0%、小5が8.6%、中1で6.2%、中3では4.2%となっており、
学年が上がるにつれて割合は減少する傾向も見られます。
ネットで見つけた記事ですが、いじめと発達障害の関係について、
榊原洋一先生(CRN所長、お茶の水女子大学副学長 当時)のメッセージを引用させていただきます。
——–
「発達障害の子どもといじめと仲間はずれについての興味深い研究を
アメリカのトウィマン(Twyman)さんという研究者が行っています。
そこで明らかになったのは、発達障害といじめの間には極めて密接な関連があるという事実です。(中略)
注意欠陥多動性障害のある子どもの中で、いじめっ子の割合は定型発達児と有意な差はなく、
いじめられっ子の割合が定型発達児の3倍以上になっていることがわかります。(中略)
自閉症の子どもは注意欠陥多動性障害の子どもと同じく、定型発達児と比べていじめられっ子の割合が3倍近く多いことがわかったのです。
———
ここに述べられているのは、
・発達障害の子がいじめっ子になる割合は、普通の子と変わらない
・発達障害の子は普通の子に比べて3倍いじめられやすい
ということでした。
アメリカでの統計とのことですが、このような傾向は日本でも同じだと考えて良いように思います。
ただ、いじめ問題はその子の特質だけの問題でははなく、日本においては、学校や教師の対応が
大きく影響を与えます。
先日も、学校が加害者の主張のみを教育委員会に報告するという残念な事件が起きています。
12月13日の宮城県栗原市の小4男子がいじめによって不登校になり、
重大事態として認定されたという報道です。
記事によると、
被害者の保護者の話では、男児は昨年9月、ドッジボール中に味方から体を押さえつけられ、
別の味方の児童から顔にボールをぶつけられました。
昨年12月には廊下に連れ出されて腹を殴られ、「この世から消えろ。死んでしまえ」と言われたとのこと。
このいじめは今年11月まで続き、適応障害と診断されたあります。
しかも、今年1月、学校側は「関係性に改善がみられた」「いじめは解消した」と判断し、被害者の保護者に確認しないまま加害児童と同じクラスしたのです。
さらに、学校は市教委に対して、加害児童側から聞き取った内容を中心に
概要をまとめて報告していたといいます。
具体的には
・被害児童がルールを守らないので(加害者側が)極度に謝ることを求め、
それに対して被害児童が強いストレスを抱いた
・加害児童が、暴れた被害児童を止めに入ろうとして手を出した
というものです。
反対に、被害者側が学校に話したいじめの被害や訴えは、
市教委にほぼ報告されませんでした。
このことについて、市教委の話では、
男児側の「腹を殴られた」などの訴えは確認できなかったとして報告していないというのです。
これは学校による隠蔽以外のなにものでもありませんし、
情けないことに「被害者が悪い」と印象付ける報告まで行っているのです。
善悪の判断を故意にされているようにさえ見えます。
しかしながら、宮城県ではこのような事件が何度も何度も続いています。
被害者を守らんとする気概がない教育では子どもたちを健全に育てることは難しいのではないでしょうか。
恥ずかしいという気持ちを持ち合わせていないのでしょうか。
残念でしかたありません。
また、大阪の枚方でも学校の隠蔽事件が起きているようです。
報道によりと、
「大阪府枚方市立中学校の女子生徒が、同級生らからいじめを受け、教育委員会が重大事態と認定し、
調査を進めていることが分かりました。
いじめ発覚後、学校側が半年以上問題を放置していたということです。」
とあります。
両親は発覚直後に部活の顧問に相談しましたが、半年以上、
教諭間で共有するなどの適切な対応をしてもらえず、女子生徒はその後、PTSDと診断されて転校しました。
それどころか、この顧問は、約7カ月後、両親から再度の相談を受けると、被害生徒が悪いと勝手に決めつけ、
加害生徒らの前で謝罪させたというのです。
被害者に謝罪させるという手法は、被害者を黙らせるという意味で学校に都合の良い手法ですが、
なんらの解決にもならない、学校の隠蔽手法です。
この手法に対して、私たち「いじめから子供を守ろうネットワーク」は、
セミナーや講演会を通して、その危険性を訴えてきました。
被害者の精神的ダメージが大きく、翌日から不登校になってしまうケースがあまりにも多いのです。
謝罪すべきは加害者です。当然のことです。
保護者であっても学校の中では、直接に自分の子を守るということは難しいものです。
いじめ問題は早期発見・早期解決が原則です。
いくら「重大事態」と認定されたところで、元には戻れないことの方が多いのです。
学校や教師がいじめに真剣に取り組む姿勢を取り戻さない限り、子どもたちを守ることができません。
こんな学校や教師を放置していることが問題なのです。
ですから、いじめ防止対策推進法の中に、いじめを放置したり、いじめへの加担、いじめを黙認、
さらにはいじめ隠蔽の指揮をとった校長や
教員に対しての罰則を明記する必要があるのです。
新型コロナがまた増え始めています。
しかし、コロナに慣れたためでしょうか、学校でのいじめも、また増えてきているように見えます。
なにか不安に思うことがありましたら、ご遠慮なくご相談ください。
まもなく訪れる冬休み、お正月、子どもたちの疲れた心が癒やされますように。
皆様、良いお年をお迎えください。
一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明