2024年8月の代表メッセージ

8月の代表メッセージ

☆2024年8月21日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ スマホによるマイナスを生まないために □■

パリオリンピックも閉会し、まもなくパラリンピックが始まります。
昨晩、帰り道で草むらの陰からコオロギの鳴き声が聞こえてきて、秋の訪れを実感しました。
夏休みも残り少なくなってきました。
秋が近づいているわりには、例年よりもかなり暑い夏が続いています。
宿題を仕上げようとしている子や受験に向けて勉強に励んでいる子らには、
つらい暑さだと思います。

2019年に大阪、東京と続き、2020年には文科省により、学校へのスマホの実質的な持込みが許可され、
また、GIGAスクール構想により、一人一台のネット端末が貸与されICT教育(注)が始まりました。
もはや、近年は「スマホ100%時代」と言える状況です。
子どもたちのスマホやネット端末の保有率が、100%に限りなく近くなり、
夏休みであっても、子どもたちはネットを通じて毎日連絡を取り合うことが一般的になりました。

夏休みになると新学期まで会わないということが普通だった世界から、
ネットを介して、学校の人間関係を休み中も引きずってしまう世界に移行してしまいました。
そのため、夏休み中であっても、ネットを介した人間関係のトラブルも跡をたちません。
学校が長期の休みに入っても気が休まらない状況におかれるのですから、
ましてや学校に通う毎日は、子どもたちのストレスは、より高まっていると考えて良いと思います。

また、スマホの影響は人間関係だけではなく、学力にも大きな影を投げかけています。
先日、朝日新聞の「GLOBE+」が、「The New York Times」の記事を紹介していました。
「生徒のスマホ禁止、効果はあるか? いじめが減った・不当な懲罰…ユネスコの判断は?
ニューヨークタイムズ 世界の話題」
という2023年の11月の記事になります。
要点を以下にまとめてみます。
———
・2022年に授業中の携帯電話の使用を禁じたイタリアや、
2021年に子どもたちが学校に携帯電話を持ち込むのを禁止した中国に続いて、
イギリスは2023年10月、学校で生徒の携帯電話の使用禁止を勧告した。
・米フロリダ州オーランドにあるティンバー・クリーク高校では、
没収された携帯電話が特設の保管庫に入れられている。
・同校の校長は、学校での生徒の携帯電話の使用が禁止されたら、生徒の学習意欲が向上したと言う。
・同校の教師は、携帯電話の使用禁止措置で、
生徒たちがよりおしゃべりになり、協力的になったと言っている。
・批判的な人は、携帯電話の使用を禁じれば、
仕事を持っていたり家族の面倒を見ていたりする生徒に対する不当な懲罰となりかねず、
禁止措置の強要は停学など厳しい処分を助長する可能性があると警告する。
・2021年には米国の高校生の16%が、前年1年間に
メッセージやインスタグラムなどのSNSプラットフォームを通じていじめを受けたと回答した。
・スペインの学校を対象にした昨年発表の調査によると、
学校での携帯電話の使用を禁止した2地域で、ネット上のいじめが大幅に減っていることがわかった。
・ユネスコはまた、携帯電話などのデジタルツールに触れることは、
生徒が新たなテクノロジーに対する
クリティカル・レンズ(批判的な視点)を育むのに役立つ可能性がある、と示唆した。
——-

簡単にまとめると、世界各国で学校でのスマホ等の使用を禁止する動きがあることと、
スマホを使用禁止にすると学習意欲の向上が見られたということなのでしょう。

日本でも東北大学の川島隆太先生や横田晋務先生が、
子どもたちのスマホ利用に関して警鐘をならしています。
著書「スマホが学力を破壊する」、「やってはいけない脳の習慣」は、
仙台市の約七万名の生徒の追跡調査した結果を元にしています。

・自宅で勉強しようが、するまいが、携帯・スマホを使う時間が長い生徒達の成績が悪い。
・さらに、家で2時間以上勉強したとしても、携帯・スマホを3時間以上つかってしまうと、
ほとんど家で勉強をしないけれども携帯・スマホを使わない生徒の方が、成績が良くなってしまう。
・LINE等の場合には、短時間でも使用してしまうと、
たとえLINEの使用をやめても偏差値は下がってしまう。
・その理由として、LINEをしながら勉強した場合、本来勉強のために使うべき注意力や
集中力がLINEのほうへ向かってしまい、勉強に身が入らなくなってしまう。
著書では、このような指摘がなされています。
LINE等のメッセージ系のアプリでは、いつ飛んでくるのかわからないメッセージを常に警戒し、
メッセージにすぐさま反応しようとしている子ども達の姿が浮かんできます。
当然、先生方が指摘されたように、落ち着いて勉強できるはずがありません。

しかし、スマホ100%時代を昔に戻すことはできないだろうと思います。
したがって、子どもたちのスマホに対する姿勢や、使用するときの自制心やルールなど
子どもの成長に合わせて保護者や教師が導いていく必要性を感じます。
スマホの使い方一つで将来が変わる可能性があるという現実をまずは知っていただきたいと思います。

さあ、9月が始まります。新学期が始まります。
「スマホを置いて本を読もう」という呼びかけもよく耳にします。
一世代前の価値観と言われることもありますが、「読書の秋」は、これからも残していきたいものです。
夏休み明けの前後は、子どもの自殺が多くなる季節です。
どうか、子どもたちの言動に注意してあげていただきたいと思います。
何か気になることがございましたら、ご遠慮なくご相談ください。

(注)ICT教育とは、情報通信技術(Information and Communication Technology)を活用した教育の
総称。コンピュータやタブレット端末、大型提示装置、インターネットサービスなどを活用して
学習活動を行うことを指します。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

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