10月の代表メッセージ
☆2025年10月17日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]
◇ 代表メッセージ ◇
■□ 人の心が分かる教師になっていただきたい □■
朝晩の空気がヒヤッと感じられる季節になりました。
子どもたちも運動会や文化祭など、楽しくも記憶に残る日々を送っていることでしょうね。
さて、9月26日、NHKは、
「静岡 焼津 いじめを受け女子生徒が自殺 両親が市を提訴へ」という記事をネットに掲載しました。
2022年9月に自殺した中学3年の女子生徒の両親が
「教諭はいじめを認識できたのに対応を取らなかった」と主張して、
7000万円余りの損害賠償を求める訴えを起こすという内容です。
以下に、記事の内容を要約いたします。
——-
3年前、2022年9月、焼津市の公立中学校3年生の14歳の女子生徒が
学校から帰宅後にみずから命を絶ちました。
女子生徒は、この年の4月に転校してきたばかりでした。
焼津市の教育委員会が設置した専門家による調査委員会は、おととし6月に報告書をまとめています。
調査報告書では、
・「きもい」や「くさい」などの悪口や陰口のほか
・冷やかしやからかい
・発表会のために描いた絵が破かれた状態で見つかった
などの点で、女子生徒へのいじめを認定しています。
報告書では、亡くなる2か月前の道徳の授業で、プリントに
・「本当の自分は出さない。またいじめにあうかもしれないから」
・「1人の時は本当に暗い」
・「いつもぐちゃぐちゃな心境」などと書いて提出しました。
教諭は内容について
「気にはなったものの、中学生なら誰しも抱く感情、
すでに問題は解決済みと判断した」とし、
声かけや確認を行わなかったということです。
報告書は、「いじめの重要な情報として扱うべきものだった。
女子生徒の発したサインを受け止められなかったことは、
計画的に研修を行っていなかった学校の組織態勢の不備によるものだ」と指摘しています。
そのうえで、女子生徒の自殺について「唯一の原因を特定することは困難だが、
いじめと認定した行為や学校側の対応が影響を与えたことは否定できない」としています。
父親は学校に対して調査を求め、調査報告書を受け取りました。
父親は
「娘が出していた”SOS”が見過ごされた」
「優しい性格で、家ではムードメーカー的な存在だった」
「猫や絵を描くことが好きで、中学校に入ってからは美術部に所属しました」
「何があったのか、家族に詳しく話すことはなかった」
「いじめの内容は想像以上で、すべてがつらいものでした。
耳を背けたくなるような汚いことばを、なぜかけられなくてはならないのかと思いました。
先生がプリントを見て、何も思わなかったことも信じられませんでした。
おとなしい子にとってことばで書くこと自体がSOSだということをもっと感じてほしかった」
そのうえで、女子生徒に対しては
「生きているときに、いろんな言葉をかけてあげられなくてごめんねと謝りたいです。
もっと一緒にいたかったと伝えたいです。さみしいです」と話していました。
——
この事件について、9月29日の朝日新聞のネット記事では、
「いじめSOSの提出物に「Good job」ハンコ 中3自殺で両親が提訴」という記事を載せていました。
—–
両親の代理人弁護士によると、女子生徒は転校直後から提出物を通じて、
死ぬ願望やいじめがあったと学校側に示唆していた。
道徳の授業では、22年4月下旬に
「とても辛くて死にたくてどうしようも無く
なんで自分は生きているのだろうと思っていた」とプリントに記入。
7月中旬にも道徳のプリントに
「本当の自分は出さない。また、いじめに合うかもしれないから」と書いて提出したが、
担任でもある教師は「Good job!」のハンコを押して返却し、
内容に関する確認を女子生徒にしなかったという。
女子生徒はいじめを受けていることを家族に打ち明けていなかった。
ただ、学校の対応に疑問を示すことがあり、
7月ごろに「スルーされた。学校の動きがなかったので諦めた」と話していたという。
両親側は「娘は学校に無視されたと感じ、さらに多大な精神的苦痛を受けた。
学校管理下における精神的苦痛が自殺を招いた」と因果関係を主張し、
生徒への注意義務を怠った学校側の責任を求めている。
——
生徒のSOSを読み取れなかったなどという主張が通るのでしょうか。
当然、声をかけ、状況を聞きだすなど、するべきことをせずに放置する、
ましてや「Good job!」とは、生徒をバカにしていると言わざるを得ません。
この教師には「人としての心がない」と感じます。
まさかとは思いますが、
「これは授業のプントであって、いじめのアンケートではない、
だから、これは対応しなくて良い」と判断したのではないかとも思えるのです。
教師の仕事は「授業だけ」で良いわけがありません。
一人の大人として、子どもたちが学力だけでなく、人格的にもより成長していけるように
導く責任を担っているのです。
学力だけなら、将来は、AIに任せるだけの「AI教師」も誕生するかもしれません。
しかし、人間の成長には、道徳心も公共心も必要です。
教師は、「自らの後ろ姿で教育する」と昔から言われています。
現代の学校教育が求めている「教師像」が間違っているのかもしれません。
やや話がそれますが、
今年のノーベル生理学・医学賞に大阪大学特任教授の坂口志文氏が、
ノーベル化学賞に京都大学特別教授の北川進氏が選ばれたことが話題になっています。
そのお二人が共通に大切にしていた言葉が「運・鈍・根」だという記事もありました。
学生に対しても感謝の言葉を口にされていらっしゃいましたが人格の高さが現れているように思います。
大学の教員などになると「自分が研究する」ことが中心かもしれませんが、
「自分が学ばせてもらっている、ということを自覚し、その感謝を
生徒を教え導くことでお返しする」こと、
それが、教師としての信条であって欲しいものです。
「人の心が分からない教師」に変容を促し、
「人の心が分かる教師」、「人を育てることのできる教師」として育て、輩出することが
教育界の使命でなくてはならないはずです。
未来は、子どもたちが創ってゆくのです。
いじめ相談が増えています。
心に曇りがあっては、実り豊かな秋を満喫することはできません。
子供たちの様子に気になることがありましたら、ぜひ、ご相談下さい。
一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明