3月の代表メッセージ
◇ 代表メッセージ ◇
■□ 一部では、悪質さを増す「いじめ隠蔽」 □■
うぐいすが鳴く朝を迎えるようになりました。
早咲きの桜もちらほら目にするようにもなり、春を感じられる季節になりました。
2021年2月13日の産経新聞のネットニュースに、
保育園児が「いじめ防止対策推進法」を盾にとっていじめの調査を拒まれたという報道が掲載されました。
「大津市の市立保育園に通う6歳の園児が約1年半、ほかの園児から暴力や暴言を受け、
市や園側も認めたにもかかわらず、
いじめ防止対策推進法の対象に園児が含まれていないことから、
十分な調査が行われない事態が続いている」という内容です。
園児は体は「男の子」だが、心は「女の子」という性自認を持ち、スカートをはくなどして登園しており、
こうした行動をきっかけにほかの園児から「おとこおんな」「うそつき」などと言われ、
一昨年の5月ごろから毎日のように暴言や暴力をふるわれるようになったという。
母親は園長や担任に相談したが、園は加害園児について
「成長過程で、今学んでいるところ。じゃれあいだ」
「『もやもやしているから』など暴力にも理由がある」と繰り返したうえ、
本人が直接いじめ被害を訴えても対応しないどころか、
「対応しないことは正しい」と主張していたものです。
先般、「学校の対応が変わってきた。いじめに対処することが当然になった」ということを発信いたしましたが、
保育園には、善悪を明確にせずに、隠蔽する、逃げるという闇が残っています。
いまだに私たちのところに寄せられる相談でも、解決しにくい組織に、幼稚園と保育園があります。
昨年の9月には、大津市のいじめ対策推進室は「いじめである」と認定していたというのです。
その際には、市幼児政策課に助言をしたようですが、残念なことに幼児政策課は、
いじめ防止対策推進法の対象が小学生以上であることを主張し、
調査や報告もせずに、行為について「いじめには当たらず、園の対応は何一つ間違っていない」と強調したという
とんでもない主張をしていたと報道されています。
自分たちの管轄以外には「口を出すな」というセクショナリズムが、
大津市を覆っているようです。
「眼の前で苦しんで助けを求める子」を放置することが、「何一つ間違っていない」など、
大人として、教育者として「恥だ」と感じないのでしょうか。
大津いじめ自殺事件を起こした大津市であるがゆえに
全国を率いて、お手本となるべきであろうと思うのは私達だけでしょうか。
もうすでに、2011年の事件を風化させようとしているようにも思えてしまいます。
大津市は、外面だけを整えて「やってるふり」をしていると言われても仕方ないような対応だったのですが、
何故かはわかりませんが、昨年11月に、突然、
市や園は、いじめを認め、対応について謝罪したとも伝わっています。
園が独自にまとめた報告書について、母親は
「子供が危険な状態になってから認めても…失われた時間は取り戻すことはできない」
と語っているとのことです。
このニュースを読むと、「隠し通せなくなった」ので認めたというように感じてしまいます。
情けない限りです。しっかりと丁寧に調査をし、市としての対応をしてほしいものです。
別の事件ですが、2月18日の文春オンラインによりますと、
2016年9月の兵庫県加古川市の中2の女子生徒のいじめ自殺事件において、
2月10日、神戸地裁姫路支部で初めての口頭弁論が開かれました。
この事件で、加古川市の学校や教育委員会が
「法的責任はない」と言い張っているという報道がありました。
本人や友人が再三にわたって教師にいじめを訴えていたにもかかわらず、
学校側は「ただの生徒間のトラブル」と無視していただけでなく、
事件後、生徒たちが書いたいじめのメモをシュレッダーし、報告もしていなかったことが判明しています。
さらに今年1月、メモのシュレッダー廃棄が明るみになった後も
学校側は「廃棄したかは答えられない」と事実を伏せたままです。
加えて、第三者委員会の生徒への調査に対し、
学校側は調査を受けた生徒を呼び出し、何をしゃべったかを聞き回っていたといいます。
子どもたちに「恐ろしい」と感じさせる行動です。
しかも、文春オンライン編集部が加古川市教育委員会に質問状を送ったところ、
教育委員会は隠蔽と圧力を否定し、
「メモは副顧問が廃棄したが、話し合いでAさんと他の部員との関係は改善していました。
いじめを隠蔽しようとしたものとは認められません。
第三者委員会の調査について生徒に聞き回ったという事実自体、市教委として確認できておりません。
学校関係者からの聞き取りであり、圧力という表現は極めて心外であります」
これを隠蔽行為ではないと言い切れるこの姿勢に呆れ返ってしまいます。
さらに、裁判に際して、市教委は
「調査から得られた事実や過去の裁判例などに照らせば、市側に法的責任は認められない」と、コメントを公表。
岡田康裕市長も、
メモの廃棄を「理解できないことではない。紛失も廃棄も大差ない」
と隠蔽行為を問題視しない姿勢を見せているとのことです。
2件のニュースを見てきました。
いじめを許さない学校が増えてきている反面、
いじめ隠蔽する学校では、学校のみならず自治体、教委ぐるみで隠蔽工作するなど一部で悪質化しているようです。
現代の学校に必要なものは「善悪のけじめ」をつける姿勢です。
それは何よりも「教師」に求められているのです。
教員同士の庇い合い、傷の舐め合いではなく、武士道にも似た責任をとる姿勢が求められているのです。
教師が、組織の論理に振り回されず、善悪を明確できる人であってこそ、
児童生徒から信頼される「師」であり「先生」となれるのだと思います。
私たち保護者も学校における「善悪」が全うされているかどうかをしっかりと見極めていきたいものです。
まもなく春休みです。
卒業式、入学式、希望あふれる新学期。
コロナ禍におりますが、子どもたちには素晴らしい学校生活を送ってほしいものです。
新しい学年の始まりにあたって、気になることがありましたら、ご遠慮なくご相談ください。
一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明