2019年9月の代表メッセージ

9月の代表メッセージ

☆2019年9月5日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ いじめ解決に弁護士は必要か □■

暑い日が続いておりましたが、ほっとできる日が増えてまいりました。
9月、子どもたちは、本格的に次の学期を迎えています。

4年前の2015年8月、政府の「自殺対策白書」において、
9月1日は子供たちの自殺が最も多く、平均の2.6倍と突出していることが公表されました。
毎日、いじめ相談を受けている者の感覚としては、今、「いじめ」はやや減りつつあると感じています。
この4年の間に「9月1日問題」として新聞やテレビなどのマスコミで数多くとりあげられ、
自殺防止キャンペーンが展開されると共に、学校現場においてもいじめに対しての認識が大きく変わりました。

自殺の理由としては、「いじめ」が全てではありませんが、大きな問題であることは変わりません。
私たちは「いじめ犯罪! 絶対に許さない」と訴えてまいりましたが、
文科省においても、
いじめは「絶対に許されない」、あるいは「どの子どもにも、どの学校においても起こり得る」と発信していますし、
先生たちも「いじめを隠してはならない」と考えることが、現在では当たり前、「常識」になりました。
そのため、いじめを積極的に隠蔽しようとする学校は格段に減りました。
ただ、全体としては、いじめへの対処が改善されてきたとはいえ、苦しみを抱えている子が全国にいます。
いじめ問題は、いまだに大きな問題です。

そんな中、9月3日の昼にフジテレビさんから「取材したい」との電話が入りました。
内容は「いじめ保険」についてどのように思っているのか、というものでした。
「いじめ保険」は、弁護士費用の一部が補償されるという保険です。
なお、大人へのいじめも対象になるというものです。
3日の「ライブニュースit! 」にてコメントの音声も流れました。
ネットのFNN PRIMEにも
「いじめ保険」加入者増 弁護士介入で解決へ」というタイトルで掲載されましたので、ご覧いただけると幸いです。
( https://www.fnn.jp/posts/00423419CX/201909031820_CX_CX )

ちなみに、同日には「通信制高校ナビ」においても
「【いじめでつらい君へ】 プロに聞くいじめから抜け出す方法」
( https://www.tsuushinsei-navi.com/real/interview/1397/ )
としてインタビュー記事が掲載されました。

せっかくの機会ですので、「いじめに弁護士は必要か」ということを考えてみたいと思います。
実際、「弁護士をお願いしたいのですが」というご相談もよくいただきます。

前提として、知っておいていただきたいことが2点あります。
まず、「弁護士費用が掛かる」ということです。
一概には言えませんが、着手金として20万~40万円は覚悟しておく必要があると思います。
この負担に対応するものとして「いじめ保険」が考え出されたのだろうと思います。
もう一点は、「弁護士さんの資質によって、成否が大きく分かれる」という点です。
一般的には、外部の法的専門家である「弁護士」が、学校に出向いたり、
交渉の場に同席、あるいは電話で問い合わせをすることで、
それまで頑なに対応を拒んでいた学校が、態度を変えて「いじめ解決」に向かって進むということがよくあります。
ただ、うまく行かなかったという場合もあります。

「弁護士さんにお願いしているけれども、いじめが解決しない」という相談も届くことがあります。
うまく行かない理由としていくつか挙げてみます。
1. 依頼者側に立つべき弁護士が、学校側に立ち「学校の御用聞き」になってしまった。
2. 弁が立たたないため、学校側に反論できなかった。
3. 学校側の弁護士と知り合いだったために強く出れない。
4. お金は払ったけれど、何もしないで放置された。
5. 弁護士が内容証明郵便を出したが学校からは無視されて、いじめは止まらなかった。
6. 依頼者の要望を盛り込んだ書類をつくらず、勝手にすすめて失敗した。
7. 弁護士が自分の聞きたいことだけを聴いてきて、その他の話は聴こうとせず、被害者に寄り添ってくれない。
8. 学校側に「これからは弁護士さんと話します」と言われて、保護者や子供との話し合いを一切拒否された。
どれもこれも、実際に届いた相談です。

私たちが、このような事案をどのように解決に導いたかと申しますと、
「保護者が主体」となって学校と再交渉し、解決したというものがほとんどです。
まずは、いわゆる、時系列に沿って作成した「いじめの経緯書」、並びに
学校にやっていただきたいことをまとめて「要望書」という形で「文書」を作成し提示する。
さらには、第三者を交えて交渉をしたり、上位の機関等を巻き込むなどして
学校に「いじめに対応しなくてはならない」との考え方を持ってもらうという手順です。
(私たちのホームページに詳しく述べておりますのでご参照ください 「いじめ解決方法」http://mamoro.org/solution )
このような交渉によって、一週間もかからずに解決できる場合が大半です。

また、引き続き弁護士さんに活躍してもらうこともできます。
弁護士さんが所属する弁護士事務所の責任者に苦情を伝える、
あるいは、弁護士会に「この弁護士さんの対応で困っている」と相談するなどしたところ、
対応が大きく変わったということもありました。

私たちとしては、いじめが解決するために弁護士さんに依頼することは、全般的には有効だと思います。
ただ費用もかかりますし、人によって対応も変わりますので、
いじめ解決の方法をしっかりと把握して、保護者自身が取り組まれることをお勧めしたいと思います。
対処方法を知っていれば弁護士さんにお願いしなくても解決はできます。

また、フジテレビでの取材でも話しましたが、
「いじめ保険」が当たり前になるような社会は、どこか歪んでいるように思います。
本来、学校は、子供たちが「安心して、安全に学べる」環境を提供しなければなりません。
「安全配慮義務」とよばれる義務であり、当然の責任です。
これが脅かされる状況をそのままにして良いわけがありません。
文科省を筆頭に教育委員会、そして教師の皆様に、子供たちを守ってくださるように、
心からお願いしたいと思います。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明


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