5月の代表メッセージ
☆2021年5月8日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]
◇ 代表メッセージ ◇
■□ 教師の責任を問わない日本の闇 □■
今年のゴールデンウィークは、コロナ自粛の環境の中、自宅の近くで過ごされたご家族も多かったことと思います。
子供たちも4月から新学年になり、慣れない環境の中で過ごしてきて、
五月連休で気分転換できたのではないでしょうか。
オリエンテーションの期間が終わり、学校の授業も本格化してまいります。
ただ、連休中に残念な事件が起きてしまいました。
5月6日、兵庫県丹波市の林道で女子中学生の遺体が発見されたというものです。
亡くなっていたのは、捜索願が出ていた中2の女子生徒で、
警察は、通報者の23歳の男を死体遺棄容疑で逮捕しています。
「SNSで知り合い、2人で自殺しようと車の中で練炭をたいたが、死にきれなかった」
と供述しているといいます。
「今年度は、一人一台、タブレットなどの端末が配布されるGIGAスクール元年なります」と、
4月のメルマガ「入学式の春 GIGAスクールが始まる」でお伝えしましたが、
このような事件に接すると、GIGAスクールの運用や生徒指導の困難さが迫ってきているように感じます。
小学低学年からスマホを所有し、学校へのスマホの持込みも認められ、GIGAスクールが始まるという環境の下で、
いかに「危ない大人たちからの誘いを断ち切るか」ということが大きな課題になります。
したがって、ネットやSNSの情報リテラシー教育は、保護者が積極的に関わる必要があると考えています。
他にも、スマホやネットの危険性を考えなければならない大きな事件が起きています。
先週のメルマガ「職責と愛情」の中で、清川先生がとりあげていらっしゃった「旭川市のいじめ自殺事件」です。
事件を取り上げた文春オンライン
(https://bunshun.jp/articles/-/44765)には、
母親の「イジメと懸命に闘った現実を多くの人たちに知ってほしい」という言葉が掲載されています。
本当にやりきれない事件です。
いじめというよりも明確な「犯罪」です。
文春が取り上げなければ、全国的に知られることもなく「隠蔽」の闇に押し流されていたと考えられます。
先週、今週とこの事件に関連したテレビ局から取材が2件ほど入りましたし、
再掲になりますが、被害者と加害者グループが「スマホゲーム」を通してつながり、
エスカレートしていった事件と言えますので、改めて取り上げたいと思います。
ここに日本の教育の「闇」が顔をのぞかせいるようにも思います。
文春オンラインを中心に、地元誌「月刊メディアあさひかわ」の記事から、
時系列で事件の経過を下記に示します。
————
2019年4月 A中学入学。加害者の一人の中3女子と知り合う。その後、中3男女グループからのいじめが始まる。
2019年5月初め 母親に「ママ、死にたい……」
2019年4月~6月 母親が担任に4月に1回、5月に2回、6月に1回いじめ相談。とりあってもらえず。
2019年6月3日 B中学の男子生徒が「裸の動画送って 写真でもいい」等と強要。その後画像がLINEで拡散。
2019年6月15日 加害者グループと近くにいた小学生らに囲まれ多目的トイレで自慰を強要される。
2019年6月22日 10人以上にいじめを受け、目の前で川へ飛び込む自殺未遂。これにより警察が捜査。
この後、長期入院、PTSD。
日付不明
加害者の一人を触法少年として厳重注意処分、他の生徒は証拠不十分で厳重注意処分。
学校は母親に「わいせつ画像の拡散は、校内で起きたことではないので学校としては責任は負えない」、
「加害生徒にも未来がある」と告げた。
日付不明
教頭は、「写真を撮らせてください。すべて調査します」と自身の携帯でわいせつ画像などすべて撮影。
その後、「いじめは無い」と連絡。
地元メディアによると、「校長」は警察からの画像削除要請を無視。
加害者、被害者双方からの謝罪の場の要求も無視し、
家族や教育委員会に対し「いじめの事実はなかった」「男子生徒らのいたずらが過ぎただけ」と弁明。
市教委からの対応要請も放置し続けた。
警察の捜査後、加害者の所有していた画像は、いったんは削除されたが、その後復元され再拡散。
三ヶ月後、
2019年8月29日 B中学校での「謝罪の会」。「私たちは見ていただけ」と。
2019年9月 引っ越し、転校。PTSDで転校先に通うことも出来ず。
2019年9月11日 A中学校での「謝罪の会」。加害者に反省の色なし。
復元された画像の拡散が続く。
2019年9月 地元情報誌に事件が掲載。
2021年2月13日 失踪。
2021年3月23日 遺体で発見
2021年4月15日 文春オンラインが掲載。
2021年4月22日 市長がいじめ調査を指示。
2021年4月26日 国会の決算委員会にて質問、文科大臣答弁
2021年4月27日 市教育委員会が「重大事態」に当たると認定、第三者委員会による調査することを発表。
————
この時系列を読まれて気分を害された方もいらっしゃると思います。
申し訳ございません。しかし、ひどすぎる内容なのです。
「写真なんか送らずに、つきあうのをやめて逃げればよかったのに」というご意見もあろうかとは思いますが、
いじめにより、短期間のうちに、洗脳状態に追い込まれ、
逃げ出すことができないところまで来ていたと考えるべきだと思います。
ここまで来てしまっていたら大人でも自力で離脱することはそう簡単にはできません。
母親からの相談に対して、「学校」が真摯に取り組めば、
このような悲惨な結果ならずに解決することはできたはずです。
学校の姿勢を問うべき事件です。
いじめを放置された結果、自殺未遂事件が起き、警察が捜査に乗り出したにも関わらず、
学校は「いじめではない」との姿勢を貫くなど、あり得ない判断をしています。
この強権ともいえる校長の姿勢ですが、
一つの要因として当時の校長が定年を目前に控えていたということがあげられます。
さらに、推測ですが、市教委はこの校長を指導する力が持たなかったのでないかということも考えられます。
教育委員会の担当者よりも高い地位や役職を経験していた場合などに起きうる逆転現象です。
しかも、関わった教師の責任が全く問われていないのです。
ここにも「隠蔽の構造」、つまり日本の教育界の闇の部分が隠されているのではないかと思います。
上記の経過にあるように、2019年夏には、学校側は最終的に、母親に対して
「わいせつ画像の拡散は、校内で起きたことではないので、当校としてはイジメとは認識していない」
「加害生徒にも未来がある」などと答え、いじめを否定したとのこと。
しかし、いじめではないというなら、何だと言うのでしょうか。
一般的には「犯罪」です。
しかも「いじめ防止対策推進法」の第三条は、
「いじめの防止等のための対策は、いじめが全ての児童等に関係する問題であることに鑑み、
児童等が安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、
学校の内外を問わずいじめが行われなくなるようにすることを旨として行われなければならない。」と、
定めています。
このように、明確に「学校の内外は問わず」と明記されています。
「学校の外で起きたこと」と言えば反論できないだろうという考えが見え透いています。
そもそも「いじめ防止対策推進法」、そのものを読んだこともないのかもしれません。
2017年2月に「那覇市でいじめ認知件数が13倍」という報道がなされたことがあります。
この前後から、公立の学校においては、教師、教育関係者が持っていた旧い常識である、
「いじめは隠蔽し、いじめゼロを維持する」という考え方が否定されるようになり、
「隠蔽という考えは古い。いじめは、いつでも、どの学校でも、どの子にも起きる可能性がある。
いじめはしっかりと対処する」という考え方が教師の常識になりました。
私たちの相談でも、学校に連絡すると解決してもらえる、という事案が大半をしめるようになっています。
しかし、この旭川市はいまだに、
「いじめ隠蔽は当然のこと。教師の正しい行動だ」
という認識が通用しているようです。
何が正しくて、何が間違っているのかという善悪の判断を誤っている地域が日本の中に未だ存在し、
それを恥じない校長、教師が存在すること自体に、力不足、さらには悔しさを感じています。
「教師が隠蔽しても、罰せられない」ことが背景にあり、これが大きな問題なんだということです。
「罰せられない」から、「隠蔽する」、しかも教師の逃げに対して、教育委員会も同調する。
マスコミに出て初めて問題視される。
日本の教育界における信念、モラル、そして何よりも「善悪を判断すること」、
これらの大事なことが「闇」に浸食されて、腐ってしまっているとしか思えません。
「教育界の闇」は教師の側にあると言えます。
この「闇」を払拭するためには、「逃げ場」を封鎖することです。
「いじめ防止対策推進法」に、隠蔽する教師への処罰を明確化すべきです。
そこに時間がかかるのであれば、
まずは、各自治体の教育委員会において「教師の懲戒処分規定」に明文化するべきです。
いくつかの自治体においては明文化されておりますが、明文化していないところがほとんどです。
あるいは「大阪市いじめ対策基本方針」は、
「本市職員による隠蔽行為に対しては、非違行為として厳正に対処するものとする」と述べておりますが、
このように宣言することも一つの方法です。
もし、このメルマガをお読みの方の中に、政治家の方がいらっしゃいましたら、
どうかご自身の地元において
「隠蔽する教師は処分する」ということを実現していただけると、
多くの子供たちが助かるはずだと思います。
何とぞ、お力をお貸しいただければ幸いです。
例年ですと、この連休明けから、いじめの相談が増えてまいります。
学校に慣れ、学友に慣れてきてたために、遠慮が消え、
思ったことをそのまま口にしてしまったり、乱暴な行動に走ったりと「いじめ」につながりやすくなる時機です。
さらに今年からはネットや、SNSが絡んだいじめが多くなりそうです。
お子さんに「おやっ」と感じたら、保護者の皆様は、お子さんのお話を聞いてあげていただきたいと思います。
話すだけでも心は軽くなりますし、「守ってもらえるんだ」という安心感をもたらします。
ただ、いじめには加害者がいます。
いじめを止めるには「加害者」を止めなくてはなりません。
このアプローチなくして「いじめ」を解決するのは難しいということを
ぜひ頭の片隅においておいていただきたいと思います。
何か、気になることがありましたら、早めにご相談いただけましたら幸いです。
一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明