7月の代表メッセージ
☆2021年7月15日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]
◇ 代表メッセージ ◇
◆◇ いじめには加害者がいるんだ ◇◆
各地で梅雨明け宣言がなされています。ここ関東地方でも本日梅雨明けいたしました。
さて、先週、先々週と続けて2校の小学校に行ってきました。
ただ、講演ではなくいじめ被害者の保護者に同行しての学校訪問です。
2件共に解決に向かいましたが、キーマンとなったのは「教育委員会」でした。
そのうちの1件は、いじめ相談員をしてくださっている方のところへの相談メールでした。
小学生男子のいじめです。体の大きな男子からいじめを受けて、不登校になっているというものです。
もともとは仲が良かったのですが、ある日の被害者の子のテストの点がよかったことがきっかけに、いじめられるようになってしまったというのです。
しかし、問題はここからです。
本人から担任に訴え、さらに母親からも担任に相談すると、
「その子に悪気はないから」
「じゃれ合っているようなものですよ」
それだけではありません。
母親は管理職に相談しようとしたのですが、教頭からは面談を断られ、替りに、児童支援コーディネーターを紹介されました。
「話を聞く気はない」という意思表示に見えます。
やや期待はしてたのですが、コーディネーターはとんでもない方だったのです。家庭の責任、子育ての責任を言い立ててきたというのです。
曰く、
「親が笑っていれば、子供はすぐに元気になるものですよ」
「(子育てにおいて)理想と現実のギャップがあるのではないですか」
「ご家庭の中に悩みがおありではないでしょうか」
こんな言動を繰り返すばかりで、肝心のいじめについては、担任もコーディネーターも全く対処しようとしないのです。「馬鹿なことを言ってんじゃないよ」と言いたくなります。
このメルマガで何度も言ってますが、
「いじめには加害者がいる。加害者を止めない限り、いじめは止まらない」。
この当たり前のことを認識していない教員にあたってしまったのです。
こんな状態の中で、お母さんは校長との面談のアポをとりました。
いじめについて相談したいと言っても拒否されるだろうからと、「息子の不登校について、どのようにしたら学校に復帰できるかご相談したい」という体裁で面談の約束をされたのです。悔しかったことだと思います。
校長先生とお電話をしていて、お母さんが気付いたことは、
「校長先生は、うちの子がいじめられていることを全く知らないんだ」ということだったのです。
担任からも教頭からも報告が上がっていないという「隠蔽体質」に染まった学校だとこの時知ったのです。
私たちは、このまま面談してもいじめがスルーされることを懸念しました。また、第三者である私たちの同席も拒否されるだろうと予測されましたので、教育委員会に電話を入れることにしました。
ちなみにお母さんからは、教育委員会への相談は検討はしたけれどまだしていないとのこと。
教育委員会においてこの小学校を担当している指導主事の先生を電話口まで呼んでいただき、「このお母さんからご相談をいただいたのですが、少し確認させていただきたいのですが」と、いじめに対しての姿勢について、まずお話を伺いました。
「お子さんが心身に異常を訴えている状態では、重大事態に近いのではないでしょうか」
「いじめについて加害者を指導しない、叱らないという指導方法を教育委員会は教師に勧めているのでしょうか」等々、
「いじめ防止対策推進法」やいじめの対処方法について確認をしながら、「実は、このようなご相談をいただいておりまして、明日、面談の予定ですが、お母さんから同行の依頼を受けているのですが、伺ってもよろしいでしょうか」と教育委員会に申し入れをいたしました。
学校には、当日の朝、再度お母さんから、「いじめから子供を守ろうネットワークの人に付き添いをお願いしたのですが、大丈夫ですか」と確認を入れていただいて同行の運びとなりました。
お母さんからの報告によりますと、「了解はいただいたのですが、学校は大慌てしているような雰囲気でした。教育委員会に電話をいれていただいたのが良かったように思います」とのこと。
当日は、すぐに校長室に案内され、担任、児童支援コーディネーターも同席の上で面談が始まりました。
私たち被害者側から学校に伝えたことは、
・「いじめには加害者がいる。加害者のいないいじめは絶対に起きない」、この当たり前のことを認識していますか。
・加害者がいじめをやめようと思わなければいじめは止まらない。
ですから、加害者に自覚を促し、指導していただきたい。
・加害者は叱られていないから、いじめを繰り返す。加害者の保護者にも連絡し、家庭ぐるみで、いじめすることは悪いことだと教える環境を整えていただきたい。
・その上で加害者から被害者に対してしっかりと謝罪させて欲しい。
・ただし、「話し合い」をして加害者の言い訳を正当化させるような機会を設けないこと。
・本人が相談しても放置されたわけですから、本人が登校できるようになるには、「いじめられない」という確信と、「先生が守ってくれる」という安心感が必要。
ですから、担任からも「絶対に守る」という決意と、本人への謝罪をしていただきたい。
・「家庭の問題」だとか言い出すのは論外の対応であり、責務を果たすことを避けないで欲しい。
・また校長がいじめが起きていることを知らなかったのは、組織としての風通しが悪いことを意味している。
その場合、一つは校長が「悪い情報」を嫌っていると知り、教員が遠慮している、あるいは、担当教員が自己保身のためにそうしているという場合が多い。
校長先生には、組織風土を変える決意をお願いしたい。
これに対して、校長先生は、「全くおっしゃるとおりです。全ては私の責任です。必ず学校に来ていただけるように、私からも息子さんに謝罪させていただきます」と話してくれました。
話をしてみると校長先生の考え方はごくごく真っ当な方で、いじめの対処方法についても、しっかりとした認識を持っておられるように感じました。
ただ、外部から人が来ていたり、教育委員会から指導が入ったことが影響していると思われるので、もしかしたら取り繕っていただけなのかもしれませんが。
その翌日には、加害者のお子さんと保護者の方からの謝罪がありました。また、担任、教頭、校長先生がそれぞれ息子さんにあやまってくれたとのことです。
息子さんは安心した様子でしたが、その次の日は疲れ切って寝ていたとのことです。
「現在はまだ保健室登校ですが、休み時間には友達と遊んでいる」という報告をいただいております。
まもなく夏休みに入ります。
コロナ禍の中でオリンピック・パラリンピックもテレビでの観戦となりましたし、出かける機会も減っておりますが、その中でも子どもたちの心が元気になるような夏休みをつくってあげていただきたいと思います。
子どもたち同志が直接に会う機会は減るのですが、インターネット、SNSのトラブルは気にかかるところです。
何か気になるようなことがありましたら、早めにご相談いただければ幸いです。
一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明