2022年6月の代表メッセージ

6月の代表メッセージ


☆2022年6月9日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ 子供たちの目が輝く授業が見たい □■

ここ関東地方も梅雨入りしました。
四季があることはなんと素晴らしいのだろうと思います。
梅雨の季節は、うっとうしくも感じるものですが、内省的にもなりやすい季節だと思います。
窓ガラス越しに雨粒をみながら読書する、なんとなく懐かしい感じがします。
そんな季節があることで、私たちは心のひだ、情緒豊かな心に成長していけるのではないでしょうか。

6月6日、読売新聞の調査で、
GIGAスクールとして2020年度以降に全国の小中学校に1人1台配備された学習用端末を使ったいじめが、
全国の主要109自治体のうち、少なくとも25自治体で47件あったことがわかったと報道されています。
具体的な事件として下記のような例が掲載されていました。

小学校
1.授業中に特定の児童に「ばか」「死ね」などとメッセージを送った
2.オンライン授業中、別の児童を勝手に強制退出させた
3.体育の授業で嫌がる女子児童の写真や動画を撮った
中学校
1.教員や被害生徒が見られない設定で、複数の生徒が悪口を共有
2.端末で卑わいな動画を表示させて他の生徒に見せた
3.別の生徒の端末に勝手にログインしてアダルトサイトを閲覧

子供たちがパスワードを入手する方法としては、
(1)他人のID・パスワードを盗み見る
(2)出席番号などから類推する
(3)本人に教えてもらって悪用する、などがあったといいます。

また読売新聞によると、「情報セキュリティー会社トレンドマイクロ(東京)の調査では、
学習用端末を配布された小中学生のうち、約2割が、
アカウント乗っ取りや不正アクセスなどのトラブルに遭っていた」ともしています。
こうしてみると、学校が発見したこれらのいじめの裏には、
見つけられなかった数多くの事件が隠れているように見えます。

子供たちが、かなり高度な設定もらくらくこなしている様子がわかりますし、
学校に「大人の社会」が侵食していると言えるのではないでしょうか。
不正な手段をとる人間にとって、相手が子供だということは関係ないのです。
ターゲットの一人にしかすぎません。
大人が注意し見守ることが欠かせなくなっていると思います。
GIGAスクールの問題点として、学校という聖域を縮小させてしまったように思います。
セキュリティの向上を図ると同時に、教員のスキルアップも考える必要もあり、
安全なシステムの構築が求められます。
しかし、何より使う子供たちのモラルの底上げが必要だと思います。
新潟県でも修学旅行で訪れた美術館で、
展示してある作品を破壊した中学生のことがニュースになっております。
あまりにも公共心が薄れた子供たちの存在に心が痛みます。

一方、
「あだ名」「呼び捨て」は禁止、小学校で「さん付け」指導が広がる、
というニュースが話題になりました。
テレビのワイドショーなどでも取り上げられたようですし、
ネットにもコメンテーターの意見が掲載されたりしています。

やや話がそれますが、名前の呼び方について、
私は、二回ほど大きな変化を味わったことがあります。
一回目は、私が卒業した高専でのことです。
当時、学生の大半は県内各地から集り、一部県外からの入学者もいました。
そこで最初に示されたのがお互いの名前の呼び方についてでした。
「互いにあだ名や下の名前で呼ぶのではなく、名字のみで呼び合って欲しい」というもの。
山の中で育ち、中学まで、下の名前の呼び捨てが多かった自分にとっては、
とても新鮮な提案で、小説の世界に近付いたような気がしたものです。

もう一つは、卒業後にシステム開発の仕事をしていた時のことです。
日本でも有数の電機メーカーであった会社からの指示は、
「会社では役職で呼ばないでください。『さん』で統一してください。
新入社員であっても『さん付け』で呼び、
呼び捨てにはしないでください」
確かにその会社では、新入社員であっても自分よりも年上の方も多く入社してきますし、
また、定年までに「課長」にまでなれるか難しい状況の中、
後輩が上司になることも珍しくありませんでした。
年功序列的な要素もありましたが、実力主義、結果主義的要素も多分にある会社において、
社員同士の嫉妬心や意味のないプライドを和らげるために
お互いをどのように呼ぶのかは重要なファクターだったのだと思います。

小学生がお互いをどう呼ぶかということについては、個人的には、
あまり「さん付け」に固執しないほうが良いように思います。
愛称は、生徒同士の距離が近くなります。
呼び捨てであっても悪いとは言えないと思います。
ただ、条件があります。
悪口をあだ名として認めてはなりませんし、相手が嫌がっているあだ名や、
人を蔑むような名称で呼ぶことを許してはならないと思います。

このような経験もあります。
あるいじめ相談で学校に伺った時のことです。
担任の先生が被害を受けた子に対して、
「○○さん、先生に力がなくてすみませんでした」と弱々しく謝罪する姿を目の当りにしたのです。
また、ある先生は、授業中に「○○さん、どう思いますか」と
授業中、終始一貫して敬語で子供たちと接していらっしゃいました。
そこには、自信がなく遠慮がちな教師と、距離をとっている子供たちの姿がありました。
何ともいえない違和感がありました。
教師は生徒に対して、リーダーであって欲しいのです。
生徒と教師の距離が遠すぎることは危険だと思います。
教師が生徒を「呼び捨て」にしても「さん付け」でも「敬語」で話しても良いと思います。
しかし、生徒に媚びたり、生徒に対しておどおどしたりしてはならないのではないかと思います。
担任はクラスの実質的なリーダーであり、指導者です。
教師としての責任感が子供たちに伝わるように振る舞っていただきたいと思います。
そのためには「何が正しい考え方であり、正しい行動のか」、
「これは間違った考え方であり、間違った行動だ」という善悪を分け、
正義を貫く姿勢を持っていることが必要なのではないでしょうか。

子供たちにとって、一番大切なことはなんでしょう。
目をきらきらさせながら授業を受けている子供たちの姿こそ、
一番大切で、学校の本来の姿なのではないかと思います。
勉強が面白い、学校が面白い、どんどん新しいことが身についてくる。
授業が「喜び」で満ちあふれる、こういう学校を見たいと思います。
先生方も大変な毎日を送っていることと思いますし、
名前をどう呼ぶかも大切なことかもしれませんが、
子供たちが成長していくことが実感できる学校をつくってあげていただきたいと思います。
やはり、根本は魅力ある授業にあるのではないかと思います。

梅雨のこの時期、子供たちも悩むことが多くなると思います。
何か、不安が感じられましたら、ご遠慮なくご相談いただければ幸いです。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

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