12月のメッセージ
■□ 学校の隠蔽工作への対応 □■
11月には小中学校で3回、それ以外でも3回程、いじめについて話す機会をいただきました。
ひとつの中学校では、「いじめフォーラム」として開催されました。
生徒が発案し、主体的に行ったいじめアンケートの発表もありました。
全生徒への27項目にものぼるいじめアンケートによると、全校生徒の48.8%もの生徒が
「悪口などのいじめを受けた」と感じているという数字が出ていました。
ちなみに、たたく、蹴るなどの暴力行為を受けたという子は31.1%、
無視されたという子が23.2%などの結果がまとめられておりました。
生徒たちから、この数字を基にして結果をまとめクラス、学年毎に
「いじめにどう向き合うか」ということの発表がなされました。
文科省は、10月26日にいじめ認知件数が、32万3,808件、昨年から10万件近く増加したことを公表していますが、過去最多とはいえ、推定数からみるとあまりにも少ない数字です。
生徒たちに「嘘をつくな」と教えている教員です。自ら自身が、脚下照顧(きゃっかしょうこ)し子供たちに向き合って欲しいものです。
この学校の中学生たちのように、正直にありのままの現状を報告する姿勢、
「うそをつかない」、「表面だけ取り繕わない」という清々しさ、潔さを私たち大人は大切に守らなくてはならないものだと思うのです。
また、この生徒たちを指導された先生方の内に、生徒の自主性を大切にし、大人の世界を押し付けない姿勢と共に、教師としてのあるべき姿を見たように思います。
反面、この正直な姿勢と真反対な学校の姿が先週、報道されました。
2016年8月に起きた青森県東北町の中1男子の自殺事件。
「いじめがなければもっと生きていた」とのメモを残しての自殺でした。
亡くなる三ヶ月前、学校はいじめのアンケートを取っていたのですが、そのアンケートを学校が破棄していたという事実が、今年の11月30日に発覚したと報道されています。
取材にたいして、町は、学校側は「確認して内容に問題がなかったので破棄した」などと説明したというのです。
しかし、遺族によると、生徒は保護者に「どうやって書いたらいいか」とアンケートの記入について相談し、「いじめがあります」に印をし、具体的に「いすを蹴られたり、からかわれたりする」と記入したとのことです。
「いじめ隠し」としか考えようがありません。
私たちのところに届く相談の中にも、
「アンケートを隠された」、
「連絡帳が捨てられた」、
「いじめの証拠として破かれた体操着を担任に預けたが、焼却された」
などの証拠を握りつぶすような学校や教師による「隠蔽事件」に出くわすことがあります。
この学校による「隠蔽工作」への対策を持っていることで、いじめがスムーズに解決すること数多くあります。
最初にお伝えしておきたいことは、
いじめの解決を学校に要望するときに、証拠があると学校の対応も早くなるということです。
そこで、私たちは、証拠や証人になる子を確保して、学校との交渉に臨むことをおすすめしています。
本来は、証拠の保全は学校の責任ですし、関係する子たちへの聞き取りも学校の責務です。
しかし、隠蔽する教員がいることも事実ですので、保護者としては、このような事態に陥いらないように「いじめの証拠や証人」を集めておくことが子供を守る力となります。
証拠を破棄されないためには、学校には「現物」を渡さないことです。唯一の証拠を渡さないことです。
証拠となりうる物は、全て写真に撮っておきましょう。
身体のケガや傷、破かれたノートや上履き、机の中に入れられた手紙、連絡帳、手当たり次第といっても良いくらいに写真に取ります。
そして、学校が提出を求めてきた場合は、コピーや写真を提出しましょう。
その際には、渡した日時、教員の氏名をしっかりと記録しておくことを忘れないようしてください。
また、先に学校に差し押さえられた場合には、
「見せてください」、あるいは「その体操着はうちの子の所有物ですから、勝手に盗るのは犯罪になりますよ。返してください」等と交渉して返還を要求しましょう。
「録音」も重要な証拠になります。
「私が見ていないのでいじめとは言えません」と堂々と述べる教師もいます。
その場合には、お子さんにICレコーダーを持たせて、学校での一日を録音してしまうことも有効です。
そうすれば、数日で証拠が集まります。また、全部を聞く必要はありません。
いじめが起きた前後だけを再生すれば良いのでそれほどの時間は必要ありません。
さらに、担任や校長先生との会話を録音することも大切です。
「そんなことは言ったつもりはありません」と前言を翻すことが平気な先生も多いからなのです。
近頃は、スマホのアプリを使えば簡単に録音ができますし。
そして、忘れてならないのが、いじめの経緯を記した「いじめ被害経緯書」と学校に対しての要望を「要望書」という「文書」にして学校と交渉することです。
文書にすることが、とても効果を発揮します。
ちなみに、要望書には、
1.いじめの加害者から謝罪
2.いじめ加害者の保護者に事実を伝えること
3.加害者から二度としないという確約を取る 4再発防止策をまとめる
その他、必要に応じて、席替え、場合によっては担任を替えることなどの要望を記入することをおすすめしています。
その際には期限も明記しておきます。
ホームページには、文書の例も掲載しておりますので、参考にしてみていただきたいと思います。
今年もまもなく終わります。
入学試験を前にして大切な時期、子供たちを暖かく見守ってあげていただきたいと思います。
子供たちの様子で気にかかることがございましたら
ご遠慮無く、ご相談いただけましたら幸いです。
一般財団法人 いじめから子供を守ろう ネットワーク
代表 井澤 一明
【過去の代表メッセージ】
2017年11月の代表メッセージ『期待できる「長野県のLINEいじめ相談」と「ニューヨーク州の処罰法」』
2017年10月の代表メッセージ『守られすぎている教師』
2017年9月の代表メッセージ『懲戒と体罰の違いについて』
2017年8月の代表メッセージ『国のSNS相談-解決しなければ意味がない』
2017年7月の代表メッセージ『学校に口実を与えないために』
2017年6月の代表メッセージ『子供のスマホを覗いたら、いじめを見つけてしまった!』
2017年5月の代表メッセージ『教員が子供のことを考える』
2017年4月の代表メッセージ『教育は自由であるべきだ』
2017年3月の代表メッセージ『学校は「変えよう」と思えば変わる』
2017年2月の代表メッセージ『学校にとっては暴力より「いじめ」が問題』
2017年1月の代表メッセージ『1.いじめ撲滅に向けて、2.「いじめ」はなぜ起きる?』
2016年12月の代表メッセージ『学校を通さずに「重大事態」の報告できるシステムを!』
2016年11月の代表メッセージ『いじめの実態といじめ認知件数』
2016年10月の代表メッセージ『被害者ファースト』
2016年9月の代表メッセージ『子供たちが不安になる季節』
2016年8月の代表メッセージ『「生徒指導支援資料6“いじめに取り組む”」に学ぶ』
2016年7月の代表メッセージ『リフレッシュ』
2016年6月の代表メッセージ『生徒自身によるいじめ対処の実践』
2016年5月の代表メッセージ『捏造もありえる? 学校主体の調査委員会』
2016年4月の代表メッセージ『「お互いを知る」からいじめが起きる』
2016年3月の代表メッセージ『いじめによる後遺症を残さないために』
2016年1月の代表メッセージ『新年にあたって』
2015年12月の代表メッセージ『いじめに少人数学級は有効か』
2015年11月の代表メッセージ『学校は治外法権ではない』
2015年10月の代表メッセージ『「教師の力」が教育の力となる』
2015年9月の代表メッセージ『「大阪市いじめ対策基本方針」に教師の懲戒処分』
2015年8月の代表メッセージ『パソコンが原因?』
2015年7月の代表メッセージ『1.「人としての誇り」を育てたい、2.自殺するぐらいなら学校に行かなくてもいい』
2015年6月の代表メッセージ『「学校は警察じゃない」に反論しよう』
2015年5月の代表メッセージ『5月は、不安な時期。支えてあげて欲しい』
2015年4月の代表メッセージ『言うべきことは言おう』
2015年3月の代表メッセージ『道徳教育のモラルジレンマ』
2015年2月の代表メッセージ『フィンランドの教師が語る「家で教えて欲しいこと」』
2015年1月の代表メッセージ『新年を迎えて』
2014年12月の代表メッセージ『相談、続々の12月』
2014年11月の代表メッセージ『35人学級?』
2014年10月の代表メッセージ『警察庁統計発表によせて』
2014年9月の代表メッセージ『やればできる』
2014年8月の代表メッセージ『いじめと戦おう』
2014年7月の代表メッセージ『不登校ゼロの学校があった!』
2014年6月の代表メッセージ『子供ができるいじめ対処』
2014年5月の代表メッセージ『子供の無限の可能性を信じよう』
2014年4月の代表メッセージ『あきらめない』
2014年3月の代表メッセージ『教師に道徳教育を』
2014年2月の代表メッセージ『国境を越えて、いじめをなくそう』
2014年1月の代表メッセージ『新年にあたって』
2013年12月の代表メッセージ『いじめと学力』
2013年11月の代表メッセージ『フリースクールより転校を!』
2013年10月の代表メッセージ『「いじめ防止対策推進法」施行』
2013年9月の代表メッセージ『子供たちにスマホ時代が来た!』
2013年8月の代表メッセージ その2『いじめの原因は家庭?』
2013年8月の代表メッセージ その1『実効性が薄い「いじめ防止対策推進法」』
2013年7月の代表メッセージ『いじめ自殺をなくしたい! 参院選立候補表明』
2013年6月の代表メッセージ『戻りつつあるいじめ対応』
2013年5月の代表メッセージ『スクールカースト?』
2013年4月の代表メッセージ『「文書」こそ、いじめ解決の王道 』
2013年3月の代表メッセージ『子供たちのために 』
2013年2月の代表メッセージ『ならぬものはならぬものです』
2013年1月の代表メッセージ『さあ2013年』
2012年12月の代表メッセージ『書籍紹介「いじめを絶つ! 毅然とした指導3」』
2012年11月の代表メッセージ『「本気の先生」を応援したい』
2012年10月の代表メッセージ『可児市いじめ防止条例施行』
2012年9月の代表メッセージ『学校が変わった?』
2012年8月の代表メッセージ『子供に元気を』
2012年7月の代表メッセージ『責任の明確化』
2012年6月の代表メッセージ『もうすぐ夏休み?』
2012年5月の代表メッセージ『「なぜ日本の教育は間違うのか」(扶桑社刊)に思う』
2012年4月の代表メッセージ『自律心を大切に』
2012年3月の代表メッセージ『春休みを前に…』
2012年2月の代表メッセージ『「いじめを訴える」ということ』
2012年1月の代表メッセージ『新しい年を迎えて…』